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第58話 選択

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【プレイヤーは吟遊詩人コンテストまでの30日間、選んだ女の子の行動を決めて、吟遊詩人として成長させてください】
【行動は、1日の内を午前・午後・夜の3回行えます】
【また、7日ごとに大きなイベントが発生します】
【「吟遊詩人総選挙」当日には、各参加者によるパフォーマンスが行われ、その結果が選挙に大きく影響します】
【パフォーマンスは、歌、楽器、踊りの3つの要素で判定され、各キャラクターにはそれぞれ得意・不得意な分野があります】
【各キャラクターの長所・短所を活かし、うまくプロデュースしてください】

 俺達の目の前にはそんなシステムメッセージが表示され、自分が担当する女の子を選ぶモードへと移っていた。

「ここで、自分が『この子だ』って思った子を選ぶわけだな」

 6人の女の子を値踏みするように見つめながら、メイが呟いた。
 俺が同じことをしたら、不審者として通報されそうだ。

「あ、話しかけたら何が得意とか不得意とか教えてもらえますね」

 ミコトさんは早くも積極的に、女の子達に接触をはかっていた。

「でも、選んだ女の子が同じだったらどうするんだろうか?」

 クマサンは選ぶ前から早くもそんな心配をしていた。

「話し合いで解決できるならそれでいいし、もし無理そうならその時はジャンケンとかかな? まぁ、でもそういうのは、そうなった時に考えればいいじゃないか」
「そうだな。まずは選んでからか」

 俺とクマサンも、自分が担当する女の子を見定めるべく、六姉妹へと近づいていく。

 俺はまず、長女のアリサから順番に見ていくことにした。
 彼女は、青みを帯びたストレートの長い髪を持ち、おっとりした優しげな顔立ちをしている。妹達を叱咤しながらまとめ上げるような姉ではなく、その柔らかな微笑みで、聖母のように妹達を温かく包み込んで守るタイプの姉なのだろう。彼女の服装は、淡いブルーグレーのゆったりとしたニット風のトップスと、リラックス感のあるベージュのロングスカート。彼女の姿を見ていると、守ってあげたくなるような感情と同時に、頭を撫でてもらって甘やかされたいという気持ちが湧いてくる。
 歌、楽器、踊りについては、楽器は得意だが、踊りは苦手で、歌は平均的というバランスになっている。彼女の穏やかで柔らかな性格は、確かに歌の世界に表れそうだが、激しいリズムに合わせたダンスは苦手なのかもしれない。

 二人目は次女のイングリッド。
 派手な金色の髪が、大きな耳飾りと一緒に揺れている。彼女からは、長女のアリサとは対照的に派手で、ちょっとやんちゃそうな印象を受ける。また、そのスタイルは一目瞭然だ。彼女の服装は、鮮やかな黄色のタンクトップに青いショートパンツ。身体のラインが際立ち、露出が多いことで魅力的に見える。
 楽器は得意だが、歌は苦手で、踊りは平均的。彼女の活発でエネルギッシュなところは、きっとステージでの大胆な演奏やパフォーマンスにきっと活かされることだろう。

 三人目は三女のウェンディ。
 彼女は一見すると控えめな印象を受ける。黒髪ショートヘアはシンプルで、体格も六姉妹の中で一番小柄だ。しかし、その大きな瞳には、強い意志が宿っているのが感じられる。静かな雰囲気ながら、芯の強さが感じられ、不思議と目が惹きつけられた。
 彼女の服装は、ライトグレーの足元まで届くシンプルなワンピース。派手さはないが、その静かな美しさが彼女の本質を表しているようにも感じる。
 歌は得意だが、踊りは苦手。楽器は平均的。彼女の歌声には、きっと内に秘めた強さと優しさが込められているに違いない。

 四人目は四女のエルシー。
 赤い髪をツインテールにしていて、その可愛らしさはひときわ目を引く。綺麗というよりも可愛い系。ちょっと小生意気そうにも見えるが、生来の可愛さでそれすらも魅力的に見える。
 彼女の服装は、赤の長袖トップスに、黒のミニスカートで、そのスカートから覗く黒いニーソックスに包まれた細い脚が魅力的だ。ただし、残念ながらお胸の方は六姉妹の中でも彼女が一番控えめかもしれない。
 彼女は、踊りは得意だが、楽器は苦手。歌は平均的。彼女の軽やかなダンスは、きっとステージで多くの人を魅了することだろう。

 五人目は五女のオーロラ。
 緑がかったウェーブのかかった長い髪が印象的だ。前髪が長めで、どの角度から見ても不思議と片目が隠れて見える。どこかミステリアスな雰囲気で、五女ということはこの中では二番目に若いはずなのに、どこか大人びて見える。
 彼女の服装は、サテン風のダークグリーンのブラウスに、黒のタイトスカート。彼女のミステリアスな魅力をさらに引き立てている。
 彼女は、踊りは得意だが、歌は苦手。楽器は平均的。彼女の踊りには不思議な大人びた雰囲気が漂うことだろう。

 最後は六女のカレンだ。
 末っ子だが、甘え上手といった感じではなく、真面目な努力家といった印象の女の子だった。茶色に近い髪をポニーテールにまとめ、赤いリボンが特徴的だ。
 服装は、白のブラウスにブルーのリボンタイ、下はチェックのプリーツスカートで、どこか学校の夏服を思わせる清楚なスタイルだ。
 彼女は、歌は得意だが、楽器は苦手。踊りは平均的。彼女の歌声には、その真面目さと誠実さが滲み出てくることだろう。

 六姉妹それぞれと話し、彼女達の印象や、得意・不得意を聞き取った結果は、以上のようなものだった。
 それぞれ、得意なことや苦手なことに差はあるが、恐らくゲームを左右するほどの大きな差ではないだろう。もしそうだとしたら、この担当の女の子の選択でこの先の勝敗が決まってしまうことになる。だから、彼女達の得意・不得意ジャンルは、それぞれの個性の一環と見るべきだろう。
 だとすると、誰を選ぶかで最も重要なのは――やはり、自分の「好み」だ!

 アリサの、どこかバブみを感じさせてくれる大人っぽい感じは、これから共に日々を重ねる中で癒しとなるだろう。
 イングリッドは、六姉妹の中ではギャル系の女子と言える。ギャル系女子は正直苦手だが、彼女の圧倒的なスタイルはその苦手部分を補って余りある。長く一緒に行動することを考えると、きっと彼女のナイスバディは目の保養になるだろう。
 ウェンディは、見た時から誰かに似ていると感じていた。俺に女友達などいるはずもないので、一体彼女に誰の姿を重ねたのか、正直、自分でもよくわからない。そのせいか、六人の中で目立つタイプではないのに、なぜか強く惹かれる部分がある。
 エルシーは、ツインテールと黒ニーソがクソ可愛い。実はその二つの要素は、俺がとても好きだったりするのだ。特に絶対領域がなんとも言えないほど魅力的だ。ふとももを見せてくれているのは、ショートパンツのイングリッドも同じだが、スカートの裾からチラチラ見える白い太ももは、やはり一味違う。
 オーロラは、唯一の目隠れキャラ。そこは加点ポイントだろう。あと、何か憂いを帯びた過去がありそうなミステリアスさも捨てがたい。
 カレンは夏の女子の制服のような服装が、俺の心の中の青春を刺激する。あと、ポニーテールもいい。リボンはちょっと子供っぽく見えるが、似合っているのでマイナス要素ではない。明るくて性格が良さそうなのもプラスポイント。

 これは迷う……。
 こういう時、ただのゲームのイベントのキャラだからといって、適当に選ぶようなプレイヤーとは、きっと友達にはなれないだろう。
 こういう時は、つき合う女の子を選ぶのと同じくらいに悩んで決める――俺はそういう人と友達になりたい。

「私は決めたぞ。みんな魅力的で迷うけど、見た時から一人だけ心に響くものを感じる子がいたんだ。私はやっぱりその子にする。みんなはどうだ?」

 すでに心を決めたメイが、俺達の方へと視線を向けてきた。
 適当に決めたのではなさそうなことに安心する。

「私も決めました。悩みましたけど、一番応援したいって思える子にします!」
「俺も決めた。一緒に頑張りたい子がいる」

 ミコトさんもクマサンもその顔を見れば、真剣に考えた末に結論に至ったことがわかる。
 そして、六人の女の子の間で揺れていた俺も、すでに決断を下していた。

「俺もだ。じゃあ、みんな、俺が合図したら、一斉に自分が選んだ子を指さそう」
「ああ、了解だ」
「はい、オッケーです」
「わかった」

 全員に緊張が走る。みんなも自分の選択にもう迷いはないのだとわかる。だが、それだけにもしほかの誰かと被っていたらという不安が頭をよぎってしまうのだろう。

「いくぞ、みんな。せーのっ!」

 四人の指が、それぞれ選んだ女の子に向かって伸びる。
 幸運にも、全員の指は別々の子を指していた。

 メイが選んだのは、次女のイングリッド。
 ミコトさんが選んだのは、六女のカレン。
 クマサンが選んだのは、三女のウェンディ。
 そして、俺が選んだのは――四女のエルシーだった。
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