6 / 25
side-朝陽
5
しおりを挟む
福岡の新店舗でのオレの仕事は昨日の営業で終わった
福岡でも有名な明太子を使ったお菓子をお土産に貰い、部屋に帰ってきた
早いもので、ここに来て1ヶ月、今日の昼の新幹線に乗って戻る予定になっている
「戻っても、琥太郎は居ないんだよな…」
小さく溜息を漏らす
最後に病院で会った日から、一切連絡も取っていない
一度だけ、勇気を出して電話してみたものの『プープー』と音がし、直ぐに切れてしまった
通話中なのかともう一度しようかと思ったが、調べたら着信拒否をされていると同じように繋がらないらしい…
着信履歴も残らない
繋がることもない
全てを拒絶されているような、今までを否定されているような気持ちになった
それ以来、確かめるのが怖くて、連絡することはなかった…
「あさひ~、お前の髪、ホントふわふわでヒヨコみたいだなぁ~
本当、俺のあさひ可愛いなぁ~」
夕飯の料理をしているオレを後ろから抱き着いて、いつも人の頭に顔を埋めてくる吸ってくる琥太郎
何度、キッチンに立ってる時はくっ付いてくんな!って怒っても、治そうとしない彼
文句を言ってもなかなか止めてくれない彼を小突き
「コタ、料理中は邪魔だって!危ないからやめろって!それに、オレは猫じゃないんだから吸うなよ!減る!!」
どれだけ文句を言ってもやめなくて、仕舞いにはペチンッと良い音を立てて額を叩く
「コタしつこい!」
煮込んでいたカレーの火を止めてから、頬を膨らませて振り返る
怒っているのに、怒られているはずの本人は嬉しそうにオレの頬を両手で挟んで啄むようなキスを何度もしてくる
「ひよ、可愛いなぁ~。あさひよこ、ひよ、ピヨ?」
こいつ酔ってるのか?と呆れたように溜息を漏らし、琥太郎の硬い髪を撫でて胸に押し当てるように抱える
「コタ、疲れてんだろ?後でいっぱい甘やかしてやるから、先に飯食お?風呂も一緒に入ってやるから」
胸に擦り寄りながら幸せそうにしていたのに、オレの言った言葉にガバッと顔を上げて見詰めてくる
期待に満ちたキラキラした目で見詰めてくる彼に、つい母性本能を擽られ、今日の睡眠時間が削られていくのをヒシヒシと感じ、つい諦めモードになる
「普段はめちゃくちゃカッコいいのに…、ホント、コタは甘えたでちゅね~」
揶揄うように赤ちゃん言葉で喋り、彼の髪をガシガシ撫でるも幸せそうに微笑まれる
そんな顔を見ると、オレまで幸せになってしまう
年上で、仕事も出来て、しかも社内でもイケメンだと女子からの人気のコイツが、オレには子どもみたいに甘えてくる姿なんて想像できないだろうなぁ…
何気ない、いつもの会話
いつものじゃれ合い
そんな、変わらないはずの日常
今は愛しくて仕方ないやり取り
目を閉じると、いつでも思い出すことの出来る彼の笑顔
「コタ、会いたいよ…抱き締めてよ。愛してるって、言ってよ…」
誰も居ない部屋で膝を抱える
涙がズボンに滲みを作るも、止めることは出来なかった
あの家に帰れば、嫌でも思い出してしまうだろう
たくさんの思い出が詰まったあの部屋
しあわせな思い出の詰まったあの部屋
多分、思い出す度に涙が出ると思う
寂しくて
悲しくて
泣き叫びたくなるだろう
それでも、今日、オレは大阪に帰らなきゃいけない
本来働いている店舗での仕事もあるし、このままここに居続けることは出来ないから…
2人の思い出が詰まった寂しい部屋に、今日、帰ることになる
福岡でも有名な明太子を使ったお菓子をお土産に貰い、部屋に帰ってきた
早いもので、ここに来て1ヶ月、今日の昼の新幹線に乗って戻る予定になっている
「戻っても、琥太郎は居ないんだよな…」
小さく溜息を漏らす
最後に病院で会った日から、一切連絡も取っていない
一度だけ、勇気を出して電話してみたものの『プープー』と音がし、直ぐに切れてしまった
通話中なのかともう一度しようかと思ったが、調べたら着信拒否をされていると同じように繋がらないらしい…
着信履歴も残らない
繋がることもない
全てを拒絶されているような、今までを否定されているような気持ちになった
それ以来、確かめるのが怖くて、連絡することはなかった…
「あさひ~、お前の髪、ホントふわふわでヒヨコみたいだなぁ~
本当、俺のあさひ可愛いなぁ~」
夕飯の料理をしているオレを後ろから抱き着いて、いつも人の頭に顔を埋めてくる吸ってくる琥太郎
何度、キッチンに立ってる時はくっ付いてくんな!って怒っても、治そうとしない彼
文句を言ってもなかなか止めてくれない彼を小突き
「コタ、料理中は邪魔だって!危ないからやめろって!それに、オレは猫じゃないんだから吸うなよ!減る!!」
どれだけ文句を言ってもやめなくて、仕舞いにはペチンッと良い音を立てて額を叩く
「コタしつこい!」
煮込んでいたカレーの火を止めてから、頬を膨らませて振り返る
怒っているのに、怒られているはずの本人は嬉しそうにオレの頬を両手で挟んで啄むようなキスを何度もしてくる
「ひよ、可愛いなぁ~。あさひよこ、ひよ、ピヨ?」
こいつ酔ってるのか?と呆れたように溜息を漏らし、琥太郎の硬い髪を撫でて胸に押し当てるように抱える
「コタ、疲れてんだろ?後でいっぱい甘やかしてやるから、先に飯食お?風呂も一緒に入ってやるから」
胸に擦り寄りながら幸せそうにしていたのに、オレの言った言葉にガバッと顔を上げて見詰めてくる
期待に満ちたキラキラした目で見詰めてくる彼に、つい母性本能を擽られ、今日の睡眠時間が削られていくのをヒシヒシと感じ、つい諦めモードになる
「普段はめちゃくちゃカッコいいのに…、ホント、コタは甘えたでちゅね~」
揶揄うように赤ちゃん言葉で喋り、彼の髪をガシガシ撫でるも幸せそうに微笑まれる
そんな顔を見ると、オレまで幸せになってしまう
年上で、仕事も出来て、しかも社内でもイケメンだと女子からの人気のコイツが、オレには子どもみたいに甘えてくる姿なんて想像できないだろうなぁ…
何気ない、いつもの会話
いつものじゃれ合い
そんな、変わらないはずの日常
今は愛しくて仕方ないやり取り
目を閉じると、いつでも思い出すことの出来る彼の笑顔
「コタ、会いたいよ…抱き締めてよ。愛してるって、言ってよ…」
誰も居ない部屋で膝を抱える
涙がズボンに滲みを作るも、止めることは出来なかった
あの家に帰れば、嫌でも思い出してしまうだろう
たくさんの思い出が詰まったあの部屋
しあわせな思い出の詰まったあの部屋
多分、思い出す度に涙が出ると思う
寂しくて
悲しくて
泣き叫びたくなるだろう
それでも、今日、オレは大阪に帰らなきゃいけない
本来働いている店舗での仕事もあるし、このままここに居続けることは出来ないから…
2人の思い出が詰まった寂しい部屋に、今日、帰ることになる
104
お気に入りに追加
599
あなたにおすすめの小説


キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?


僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。

ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。
水鳴諒
BL
目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)

騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

火傷の跡と見えない孤独
リコ井
BL
顔に火傷の跡があるユナは人目を避けて、山奥でひとり暮らしていた。ある日、崖下で遭難者のヤナギを見つける。ヤナギは怪我のショックで一時的に目が見なくなっていた。ユナはヤナギを献身的に看病するが、二人の距離が近づくにつれ、もしヤナギが目が見えるようになり顔の火傷の跡を忌み嫌われたらどうしようとユナは怯えていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる