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side-朝陽

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「いらっしゃいませ~、3名様ですね。こちらのお席にどうぞ~」
「パスタランチAセットとCセット、珈琲とミルクティーでお間違いないでしょうか?」
「ご注文はお決まりですか?」

 オープン初日ということもあり、次から次へとお客が来店してくる
 オレと司馬は裏の調理のサポートに周りながら、出来るだけスムーズに回転できるよう、色々な場所を駆け回っていた


「竹内、クマケーキあと5個だから予備準備頼む」
「OK!あと、チーズケーキとチョコのやつ、あれも多めに出しとくわ。ランチ用のスープも減って来たし準備伝えとく」




 あの晩、司馬に告白されたものの、誤魔化すように酒を飲み、呑み潰れたオレを送ってくれたのも司馬だった
 酔い潰れて、泣き散らかして、散々愚痴を溢していたらしい
 なのに、司馬は何も言わずにオレの介抱をしてくれて、やましいこともせずにオレの部屋まで連れて帰ってくれた


 翌朝、土下座する勢いで昨晩の失態を謝ったら、
「俺の気持ちは変わらないから。今は、オープンに向けて頑張ろうぜ」
 と言って貰えた



 琥太郎こたろうへの気持ちを、そう簡単に切り捨てることなんて出来ないオレに猶予をくれ、しかも、今は仕事に集中出来るようにいつもと同じ対応をしてくれる


 ホント、なんでこんな出来た奴がオレなんかを好きになってんだろ……
 司馬みたいな仕事も出来るし、人当たりも、愛想も良くて、しかも爽やかなイケメンだし…


 オレみたいな平凡で、可愛くもなければ、得意なのは料理くらいなのにな…




「みんな、今日はお疲れ様~!」
 20時を回り、やっと初日のオープンを乗り切ることが出来た
 小さなトラブルはあったものの、大きなトラブルはなく、概ね順調だったと言えるだろう

「竹内さん!今日は本当にありがとうございます!」
 副店長の彼女が勢いよく頭を下げてきた

「あ、お疲れ様。すっごく頑張ってたね」
「開店前は不安と緊張でガッチガチになってましたが、ランチタイムのピークで、訳わかんなくなってきて、逆に冷静になれました」
 清々しい笑顔で話す彼女の頭をポンポンと撫で
「わかるわ~、ピーク時ってどんだけやっててもこうなるから。冷静に慣れたならエラいよ!」

「竹内さんのお陰です。ホントにありがとうございます!」
 バイトの子に呼ばれ、再度頭を下げてから掛けていく彼女に笑みを浮かべる

「はぁ~、つっかれたぁ~。まだ明日もあるし、3日くらいは今日みたいな感じだろうけど…」
 伸びをするように腕を天井に向かって伸ばす
「竹内、お疲れ~」

 オレの頭をポンポンと撫でる司馬に向かってハイタッチをする
「司馬もお疲れ。今日はありがとうな!お前のお陰で大きなトラブルも回避できたし、みんな落ち着いて働けてた思う
 さっすが、全国で一番忙しい店舗の店長様をしてるだけあるな」

満面の笑顔で司馬を労い、今日の仕事を振り返る
「司馬と仕事やるとこんな感じなんだなぁ~、なんかめっちゃ安心感あるよな!
司馬が居たら、どんなトラブルがあっても大丈夫かも。って」
うんうん。と勝手に納得しながら頷く

「何言ってんだよ。竹内のサポートがあったから、上手くいったんだよ」
なんか、いつもより少し顔が赤くなっている司馬に笑みが溢れる
いつも通りのように振る舞ってくれる司馬に感謝する


「俺はあと2日で向こうに戻るけど、竹内は月末まで居るんだろ?櫻井さくらいさんの様子、わかれば連絡すっから。無理だけはするなよ」

周りのメンバーには聞こえないように、耳元でこっそり言われる
驚いて目を見開くも、琥太郎こたろうのことを極力考えないようにしていただけに、名前を出されるだけで胸が苦しくなる


自分で確認する勇気がない
今、彼に会う勇気も出ない
彼に振られるのが怖い



俺のそんな気持ちがバレているのか、司馬の目は真剣でつい頼りたくなってしまう
「ごめん、ありがとう。」と小さく呟くと、黙ってまたポンポンと優しく頭を撫でてくれた
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