5 / 25
side-朝陽
4
しおりを挟む
「いらっしゃいませ~、3名様ですね。こちらのお席にどうぞ~」
「パスタランチAセットとCセット、珈琲とミルクティーでお間違いないでしょうか?」
「ご注文はお決まりですか?」
オープン初日ということもあり、次から次へとお客が来店してくる
オレと司馬は裏の調理のサポートに周りながら、出来るだけスムーズに回転できるよう、色々な場所を駆け回っていた
「竹内、クマケーキあと5個だから予備準備頼む」
「OK!あと、チーズケーキとチョコのやつ、あれも多めに出しとくわ。ランチ用のスープも減って来たし準備伝えとく」
あの晩、司馬に告白されたものの、誤魔化すように酒を飲み、呑み潰れたオレを送ってくれたのも司馬だった
酔い潰れて、泣き散らかして、散々愚痴を溢していたらしい
なのに、司馬は何も言わずにオレの介抱をしてくれて、やましいこともせずにオレの部屋まで連れて帰ってくれた
翌朝、土下座する勢いで昨晩の失態を謝ったら、
「俺の気持ちは変わらないから。今は、オープンに向けて頑張ろうぜ」
と言って貰えた
琥太郎への気持ちを、そう簡単に切り捨てることなんて出来ないオレに猶予をくれ、しかも、今は仕事に集中出来るようにいつもと同じ対応をしてくれる
ホント、なんでこんな出来た奴がオレなんかを好きになってんだろ……
司馬みたいな仕事も出来るし、人当たりも、愛想も良くて、しかも爽やかなイケメンだし…
オレみたいな平凡で、可愛くもなければ、得意なのは料理くらいなのにな…
「みんな、今日はお疲れ様~!」
20時を回り、やっと初日のオープンを乗り切ることが出来た
小さなトラブルはあったものの、大きなトラブルはなく、概ね順調だったと言えるだろう
「竹内さん!今日は本当にありがとうございます!」
副店長の彼女が勢いよく頭を下げてきた
「あ、お疲れ様。すっごく頑張ってたね」
「開店前は不安と緊張でガッチガチになってましたが、ランチタイムのピークで、訳わかんなくなってきて、逆に冷静になれました」
清々しい笑顔で話す彼女の頭をポンポンと撫で
「わかるわ~、ピーク時ってどんだけやっててもこうなるから。冷静に慣れたならエラいよ!」
「竹内さんのお陰です。ホントにありがとうございます!」
バイトの子に呼ばれ、再度頭を下げてから掛けていく彼女に笑みを浮かべる
「はぁ~、つっかれたぁ~。まだ明日もあるし、3日くらいは今日みたいな感じだろうけど…」
伸びをするように腕を天井に向かって伸ばす
「竹内、お疲れ~」
オレの頭をポンポンと撫でる司馬に向かってハイタッチをする
「司馬もお疲れ。今日はありがとうな!お前のお陰で大きなトラブルも回避できたし、みんな落ち着いて働けてた思う
さっすが、全国で一番忙しい店舗の店長様をしてるだけあるな」
満面の笑顔で司馬を労い、今日の仕事を振り返る
「司馬と仕事やるとこんな感じなんだなぁ~、なんかめっちゃ安心感あるよな!
司馬が居たら、どんなトラブルがあっても大丈夫かも。って」
うんうん。と勝手に納得しながら頷く
「何言ってんだよ。竹内のサポートがあったから、上手くいったんだよ」
なんか、いつもより少し顔が赤くなっている司馬に笑みが溢れる
いつも通りのように振る舞ってくれる司馬に感謝する
「俺はあと2日で向こうに戻るけど、竹内は月末まで居るんだろ?櫻井さんの様子、わかれば連絡すっから。無理だけはするなよ」
周りのメンバーには聞こえないように、耳元でこっそり言われる
驚いて目を見開くも、琥太郎のことを極力考えないようにしていただけに、名前を出されるだけで胸が苦しくなる
自分で確認する勇気がない
今、彼に会う勇気も出ない
彼に振られるのが怖い
俺のそんな気持ちがバレているのか、司馬の目は真剣でつい頼りたくなってしまう
「ごめん、ありがとう。」と小さく呟くと、黙ってまたポンポンと優しく頭を撫でてくれた
「パスタランチAセットとCセット、珈琲とミルクティーでお間違いないでしょうか?」
「ご注文はお決まりですか?」
オープン初日ということもあり、次から次へとお客が来店してくる
オレと司馬は裏の調理のサポートに周りながら、出来るだけスムーズに回転できるよう、色々な場所を駆け回っていた
「竹内、クマケーキあと5個だから予備準備頼む」
「OK!あと、チーズケーキとチョコのやつ、あれも多めに出しとくわ。ランチ用のスープも減って来たし準備伝えとく」
あの晩、司馬に告白されたものの、誤魔化すように酒を飲み、呑み潰れたオレを送ってくれたのも司馬だった
酔い潰れて、泣き散らかして、散々愚痴を溢していたらしい
なのに、司馬は何も言わずにオレの介抱をしてくれて、やましいこともせずにオレの部屋まで連れて帰ってくれた
翌朝、土下座する勢いで昨晩の失態を謝ったら、
「俺の気持ちは変わらないから。今は、オープンに向けて頑張ろうぜ」
と言って貰えた
琥太郎への気持ちを、そう簡単に切り捨てることなんて出来ないオレに猶予をくれ、しかも、今は仕事に集中出来るようにいつもと同じ対応をしてくれる
ホント、なんでこんな出来た奴がオレなんかを好きになってんだろ……
司馬みたいな仕事も出来るし、人当たりも、愛想も良くて、しかも爽やかなイケメンだし…
オレみたいな平凡で、可愛くもなければ、得意なのは料理くらいなのにな…
「みんな、今日はお疲れ様~!」
20時を回り、やっと初日のオープンを乗り切ることが出来た
小さなトラブルはあったものの、大きなトラブルはなく、概ね順調だったと言えるだろう
「竹内さん!今日は本当にありがとうございます!」
副店長の彼女が勢いよく頭を下げてきた
「あ、お疲れ様。すっごく頑張ってたね」
「開店前は不安と緊張でガッチガチになってましたが、ランチタイムのピークで、訳わかんなくなってきて、逆に冷静になれました」
清々しい笑顔で話す彼女の頭をポンポンと撫で
「わかるわ~、ピーク時ってどんだけやっててもこうなるから。冷静に慣れたならエラいよ!」
「竹内さんのお陰です。ホントにありがとうございます!」
バイトの子に呼ばれ、再度頭を下げてから掛けていく彼女に笑みを浮かべる
「はぁ~、つっかれたぁ~。まだ明日もあるし、3日くらいは今日みたいな感じだろうけど…」
伸びをするように腕を天井に向かって伸ばす
「竹内、お疲れ~」
オレの頭をポンポンと撫でる司馬に向かってハイタッチをする
「司馬もお疲れ。今日はありがとうな!お前のお陰で大きなトラブルも回避できたし、みんな落ち着いて働けてた思う
さっすが、全国で一番忙しい店舗の店長様をしてるだけあるな」
満面の笑顔で司馬を労い、今日の仕事を振り返る
「司馬と仕事やるとこんな感じなんだなぁ~、なんかめっちゃ安心感あるよな!
司馬が居たら、どんなトラブルがあっても大丈夫かも。って」
うんうん。と勝手に納得しながら頷く
「何言ってんだよ。竹内のサポートがあったから、上手くいったんだよ」
なんか、いつもより少し顔が赤くなっている司馬に笑みが溢れる
いつも通りのように振る舞ってくれる司馬に感謝する
「俺はあと2日で向こうに戻るけど、竹内は月末まで居るんだろ?櫻井さんの様子、わかれば連絡すっから。無理だけはするなよ」
周りのメンバーには聞こえないように、耳元でこっそり言われる
驚いて目を見開くも、琥太郎のことを極力考えないようにしていただけに、名前を出されるだけで胸が苦しくなる
自分で確認する勇気がない
今、彼に会う勇気も出ない
彼に振られるのが怖い
俺のそんな気持ちがバレているのか、司馬の目は真剣でつい頼りたくなってしまう
「ごめん、ありがとう。」と小さく呟くと、黙ってまたポンポンと優しく頭を撫でてくれた
70
お気に入りに追加
576
あなたにおすすめの小説
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
優しい風に背を向けて水の鳩は飛び立つ (面倒くさがりの君に切なさは似合わない)
岬 空弥
恋愛
水魔法が得意なジョナスは王宮にて洗濯メイドとして働いていた。膨大な魔力の持ち主である彼女は、ひょんなことから第二騎士団での戦闘補助を任されることになってしまう。
そして、そこで出会った無口で無表情のロステルに突然求婚され結婚してしまう。家では夫婦として、職場では仕事仲間として幸せな生活を送っていたが、夫であるロステルが第一騎士団に異動になると、それまで円満だった夫婦生活に不穏な影が差すようになる。ロステルと交代するように異動して来たヤソックは風魔法の使い手だった。同じ魔法使いとしてジョナスは彼との仲を深めていくが、一方のロステルも女性騎士との噂が囁かれるようになる。
ヤソックのジョナスに向ける純真な愛が見どころです。彼女を想うあまり、後半のヤソックにはヤンデレ化してもらう予定でしたが、ジョナスが切なさとはかけ離れている為、可哀想になってやめました。
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい
たなぱ
BL
生前、社畜だったおれの部屋に入り浸り、男のおれに乙女ゲームの素晴らしさを延々と語り、仮眠をしたいおれに見せ続けてきた妹がいた
人間、毎日毎日見せられたら嫌でも内容もキャラクターも覚えるんだよ
そう、例えば…今、おれの目の前にいる赤い髪の美少女…この子がこのゲームの悪役令嬢となる存在…その幼少期の姿だ
そしておれは…文字としてチラッと出た悪役令嬢の行いの果に一家諸共断罪された兄
ナレーションに
『悪役令嬢の兄もまた死に絶えました』
その一言で説明を片付けられ、それしか登場しない存在…そんな悪役令嬢の兄に転生してしまったのだ
社畜に優しくない転生先でおれはどう生きていくのだろう
腹黒?攻略対象×悪役令嬢の兄
暫くはほのぼのします
最終的には固定カプになります
捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる