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【白い四葩に一途な愛を】
プロローグ
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夜景が綺麗な場所とか、海沿いの綺麗なロッジとか、何処かの真っ白で綺麗な教会とか……
そんな女の子が憧れる場所とは程遠い場所。
ずっと母さんと2人で住んでいたボロアパートの取壊しが決まってから、天涯孤独のオレがひとりぼっちで住み続けている格安アパート。
オレが入居する直前に部屋のリフォームはしてくれていたけど、築50年の古いアパート。
6帖の一応洋室で、ユニットバスあり。
最寄りの駅へは徒歩20分。壁は薄いし、天井も薄いのかよく子どもが走り回っている足音も聞こえる。
市内で月3万円なんだから文句は言えないけど……
本当に古いちょっと曰く付きの部屋。
陽に焼けて少しベージュになってしまったカーテンを暖かな風が揺らす。
部屋にあるのは、貰い物のローテーブルとシングルの狭いベッド。
あとは、誕生日とかで買って貰ったクッションとか、就職祝いに買って貰ったお揃いのマグカップ。
本当に、最低限の生活用品しかない部屋。
そんな、何もない部屋。
彼がどこか緊張した面持ちで、オレの手を取ってジッと見詰めてくる。
「紫苑、愛してる。結婚しよう」
左手の薬指に嵌められたプラチナの細身のリング。
赤い糸が結ばれており、糸の端は彼の薬指に同じ光りが煌くリングに繋がっている。
「この糸が外れても、俺達はずっと繋がっている。もう、2度とこの手を離さない」
オレの手を取り、リング越しに彼の唇を感じる。
嬉しすぎて、涙が頬を伝って流れた。
嬉しすぎて、言葉を紡ごうにも何を言えばいいのかわからなかった。
ただ、幸せ過ぎて怖くなってしまう。
本当に、これは現実なのか? って……
本当は、オレの都合のいい夢なんじゃないか? って……
彼の真摯な目に見つめられ、くしゃりと顔を歪めながら頷く。
「オレ…も、愛してる。ずっと、ずっと…側に居たい」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、必死に言葉を紡いだ。
こんな汚い顔で返事するなんて本当は嫌だったけど、握られた手を離したくなくて……
眉を下げて困ったように微笑んでいた彼が、オレの返事を聞いただけで今まで見てきた中で、一番嬉しそうに笑って抱き締めてくれた。
「紫苑は本当に泣き虫だな……。あの雨の日もぐちゃぐちゃに泣いてたよな……。愛してる。絶対に、幸せにするって誓うから……」
世間ではまだこの関係を受け入れてくれる人は少ないけれど、それでも幸せだった。
ずっと憧れていた。
ずっと、片想いだと思っていた。
ずっと、叶わない想いだと思っていたから……
ただただ、一緒に居るだけで幸せだった。
彼の役に立てるならなんだってやろうと思った。
苦手だった勉強も、人付き合いも、彼の為に克服した。
「無理し過ぎ、紫苑には紫苑のペースがあるから。俺は、紫苑が側に居てくれるだけで幸せだから」
必ず疲れた時はお互いギュッて抱き締め合おうって約束した。
嫌なことがあれば、溜め込まずに必ず話し合おうって約束した。
離れていても、1日1回は電話でもいいから声を聞いて話しをしようって約束した。
約束が増える度に幸せも増えた気がした。
些細なことだったけど、一つ一つが大切で……
どれも手放したくなんてなかった。
そんな女の子が憧れる場所とは程遠い場所。
ずっと母さんと2人で住んでいたボロアパートの取壊しが決まってから、天涯孤独のオレがひとりぼっちで住み続けている格安アパート。
オレが入居する直前に部屋のリフォームはしてくれていたけど、築50年の古いアパート。
6帖の一応洋室で、ユニットバスあり。
最寄りの駅へは徒歩20分。壁は薄いし、天井も薄いのかよく子どもが走り回っている足音も聞こえる。
市内で月3万円なんだから文句は言えないけど……
本当に古いちょっと曰く付きの部屋。
陽に焼けて少しベージュになってしまったカーテンを暖かな風が揺らす。
部屋にあるのは、貰い物のローテーブルとシングルの狭いベッド。
あとは、誕生日とかで買って貰ったクッションとか、就職祝いに買って貰ったお揃いのマグカップ。
本当に、最低限の生活用品しかない部屋。
そんな、何もない部屋。
彼がどこか緊張した面持ちで、オレの手を取ってジッと見詰めてくる。
「紫苑、愛してる。結婚しよう」
左手の薬指に嵌められたプラチナの細身のリング。
赤い糸が結ばれており、糸の端は彼の薬指に同じ光りが煌くリングに繋がっている。
「この糸が外れても、俺達はずっと繋がっている。もう、2度とこの手を離さない」
オレの手を取り、リング越しに彼の唇を感じる。
嬉しすぎて、涙が頬を伝って流れた。
嬉しすぎて、言葉を紡ごうにも何を言えばいいのかわからなかった。
ただ、幸せ過ぎて怖くなってしまう。
本当に、これは現実なのか? って……
本当は、オレの都合のいい夢なんじゃないか? って……
彼の真摯な目に見つめられ、くしゃりと顔を歪めながら頷く。
「オレ…も、愛してる。ずっと、ずっと…側に居たい」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、必死に言葉を紡いだ。
こんな汚い顔で返事するなんて本当は嫌だったけど、握られた手を離したくなくて……
眉を下げて困ったように微笑んでいた彼が、オレの返事を聞いただけで今まで見てきた中で、一番嬉しそうに笑って抱き締めてくれた。
「紫苑は本当に泣き虫だな……。あの雨の日もぐちゃぐちゃに泣いてたよな……。愛してる。絶対に、幸せにするって誓うから……」
世間ではまだこの関係を受け入れてくれる人は少ないけれど、それでも幸せだった。
ずっと憧れていた。
ずっと、片想いだと思っていた。
ずっと、叶わない想いだと思っていたから……
ただただ、一緒に居るだけで幸せだった。
彼の役に立てるならなんだってやろうと思った。
苦手だった勉強も、人付き合いも、彼の為に克服した。
「無理し過ぎ、紫苑には紫苑のペースがあるから。俺は、紫苑が側に居てくれるだけで幸せだから」
必ず疲れた時はお互いギュッて抱き締め合おうって約束した。
嫌なことがあれば、溜め込まずに必ず話し合おうって約束した。
離れていても、1日1回は電話でもいいから声を聞いて話しをしようって約束した。
約束が増える度に幸せも増えた気がした。
些細なことだったけど、一つ一つが大切で……
どれも手放したくなんてなかった。
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