貧乏Ωの憧れの人

ゆあ

文字の大きさ
上 下
4 / 16

4

しおりを挟む
高い診察料を払い、最後に渡されたエコーの写真を持って病院を出た...
さっき映像として見せて貰ったモノクロの写真
ピーナッツ人形のような、まるでオモチャみたいなオレの赤ちゃん…

「ホントに、ココにいるんだ…」
膨らみのない、肉のない腹を撫でる
人気の少ない公園のブランコに座り、溜息を漏らす
子ども達が友だちに向かって元気よく「バイバーイ」と言って帰って行く声が聞こえる


「10万円...そんな金、どこにあるんだろ...」
ポケットに入れていた財布を開く
空になってしまった財布の中身を見て、つい溜息が漏れてしまう

念の為に持ってきた今月の生活費の1万円は消えてしまった
あるのは、お釣りで渡された数百円だけ…

むしろ、今月の食費すら危ないのに、中絶費用...しかも、早くしないと更に加算されるか中絶すること自体が難しくなってしまう

バイトを増やす?前借りさせて貰う?
それか、何か別の…1週間で10万円貰える仕事…
Ωらしく、身体を売れば…
でも、そんなことをしたらお腹の赤ちゃんに悪いんじゃ…

中絶しようとしてるのに、お腹の赤ちゃんのことをつい気にしてしまっていることについ失笑してしまう


「はぁ…あと、同意書のサインをどうしよう…」
誰かに頼むにしても、一体誰に…?

育てて貰った施設の人には頼めない
頼みたくない…
せっかく大学にも入れて貰えたのに…これ以上、失望されたくない…
下の子達が、大学にいく足枷になりたくない…

なんで、こんなことになっちゃったんだろ…


ぐるぐると嫌なコトばかりが頭の中を巡る
エコー写真をギュッと握り締め、泣かないように目を閉じる




「コータ?なんで、こんなとこにいるんだ?」
気付けば辺りは陽も沈み暗くなっていた
ポツポツと見える家々の明かり
公園内の街灯の光を背にしてるから、今、一番会いたくない彼の顔は影になって見えない

声からして今日も疲れているのか、少し不機嫌なのが伺える
「こんな時間にこんなとこで何してんだ?」
ゆっくりオレの方に歩いてくる彼の姿につい泣きそうなってしまう


ホント、なんでコイツはこう助けて欲しい時に現れるんだろ…
全部話してしまえば楽になれるのに…
でも、オレがこれ以上迷惑かけるのは…


「べ、べつに...、今月もお金無さすぎてどうしようかなぁ~ってだけ」

誤魔化すように憎まれ口を叩き、今さっきまで見ていたエコー写真や中絶の為の同意書などの書類を乱雑に鞄に隠すように突っ込む
オレの行動に眉を顰める顔を見て、慌ててブランコを漕ぎ出す


鞄の中身を見せろって言われても、見せれるわけない
こんなの見られたら、バレるじゃん…


「先週バイトの給料日だったのに、お金ないなぁ~って
来週くらいにはまた抑制剤貰っとかなきゃ発情期ヒートが来ちゃうかもだし…
なんか、楽してお金を稼げたらいいのになぁ~
それか、宝くじが当たるとか!買ったことないし、そんなの買う余裕一切ないけど」
今の気持ちとは裏腹に、ワザと元気よく言う
絶対にバレないように
気付かれないように…


お願いだから、気付かないで…
早く、早く…あっちに行って…


「俺の番になるならその心配も要らないって言ってるだろ
さっさと俺に噛まれて、俺のになればいい」
ガシャンと音を響かせて無理矢理ブランコを止められる
座っている俺を見下ろすように見詰めてくる彼を見上げ、視線が絡み合う


やっぱりかっこいいなぁ…


「絶対、嫌だ!拓也とだけは絶対に番にならない。拓也、好きな人が居るって前に言ってたし」
彼の脇をスルリと抜け出し、べぇーっと舌を出して駆け出す

発情期ヒートの時に相手してくれるからって、番になんかならない!さっさと好きな人に告白して、オレを代替えとして抱くのやめろよな!バーカッ!」
吐き捨てるように言って走り去る

追いかけて来ないのを確認し、徐々に走っていた足を歩みに変える
「気付かれてないよな…」
泣いてるのがバレないように、必死に堪えていたが我慢出来なくなり涙が零れ落ちる

「何が…『俺の番になれ』だ…
好きな人がいるくせに…オレなんて、同情で抱いてるだけのくせに…」
その場にしゃがみ込み、声を押し殺して泣いた

誰にも聞かれないように、見られないように、ひとりで泣いた


オレとあいつじゃ、釣り合わない
オレなんかが、拓也の番になんてなれない…

好きになんてならなきゃよかった…
あの時、出会わなければよかった…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)
恋愛
私、ノエルは左目に傷があった。 そのため学園では悪意に晒されている。婚約者であるマルス様は庇ってくれないので、図書館に逃げていた。そんな時、外交官である兄が国外視察から帰ってきたことで、王立大図書館に行けることに。そこで、一人の青年に会うー。  私は好きなことをしてはいけないの?傷があってはいけないの?  自分が自分らしくあるために私は動き出すー。ありのままでいいよね?

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

ある日、憧れブランドの社長が溺愛求婚してきました

蓮恭
恋愛
 恋人に裏切られ、傷心のヒロイン杏子は勤め先の美容室を去り、人気の老舗美容室に転職する。  そこで真面目に培ってきた技術を買われ、憧れのヘアケアブランドの社長である統一郎の自宅を訪問して施術をする事に……。  しかも統一郎からどうしてもと頼まれたのは、その後の杏子の人生を大きく変えてしまうような事で……⁉︎  杏子は過去の臆病な自分と決別し、統一郎との新しい一歩を踏み出せるのか?   【サクサク読める現代物溺愛系恋愛ストーリーです】

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

婚約破棄を喜んで受け入れてみた結果

宵闇 月
恋愛
ある日婚約者に婚約破棄を告げられたリリアナ。 喜んで受け入れてみたら… ※ 八話完結で書き終えてます。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

【完結】好きな子は虐めたい話

榊どら
恋愛
「オレがお前を好きなわけがないだろう。思い上がるな。今となっては、ただの政略結婚に過ぎん。お前に瑕疵が見つかればすぐに婚約は破棄するからな!」 公爵令息のユリウスは甘やかされ横柄な性格に育った。適当に選んだ婚約者のマリーウェザー子爵令嬢を「家来」と称し暴言を吐き、好き放題に振舞っている。 一方マリーウェザーは母親に言われた、 「男の子は好きな女の子を虐めるものよ」 と言う言葉を信じ、ユリウスを一途に慕い続けている。 卒業すれば、この歪んだ関係のまま結婚することになるだろう。 だが、そんな二人の間に男爵令嬢パメラが入り込んだことで、事態は一変する。 *小説家になろう様 カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...