●●男優の今日のお仕事

ゆあ

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●●男優のトップシークレット

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「新一くん、そろそろご挨拶に行きたいんだけど予定とかどうかな?」
怜さんの入れてくれたホットコーヒーを飲みながらまったり過ごす休日

誰に?なんの挨拶?

全くなんのことなのか分からず首を傾げる

「うちの社長もマネージャーも、怜さんのことは知ってますよ?
絶対公表するなって釘は刺されてるので、記者会見とか無理ですし、俺もやりたくはないですね」
挨拶って言葉からなんとか連想するも、それくらいしか思い付かず、怜さんが困った顔をしている

「えっと、新一くんのご両親に挨拶したいんだけど…
僕が行くのはマズイのかな?一応、恋人になって時間は経つし、将来的にもずっと一緒にいるつもりでこの前指輪も渡したんだけど…」
2人の薬指に嵌っているシンプルな指輪
先日、怜さんからプロポーズのように渡されたあの指輪

ポンっと手を叩き、納得がいく

「新一くん、ご両親は健在なのかい?もしかして、家庭の事情であの仕事をしていたって言うなら、色々納得がいくんだけど…」
マズイことを聞いてしまったと思っているのか、怜さんの顔色が見る見る悪くなる


「ん~、いえ、元気ですよ。父親は知りませんが、母親は元気に活躍してるみたいなんで
ただ、挨拶かぁ~…あの人、次いつ帰って来るんだろ…」
スマホを見ながらう~んと悩んでいたが、不意にアッと何かを思い出す

「そういえば、怜さん次の映画の撮影って来月からですよね?あの、人気漫画の実写化って言ってたやつ!」

今アニメや漫画でも人気の作品の実写化でしかもキャストも豪華だと話題の作品
女性主人公を今は海外がメインで活躍している女優が、わざわざ来日して撮影に参加することもあって、連日話題になっていた

「そうなんだ。だから、長期の撮影で家を空ける日が増えるから出来たらその前に、と思ってね
海外でお仕事をされているなら、難しいのかな…」
無理にとは……と言い淀んではいるものの、やはり挨拶はしておきたいようで、ちょっとしょんぼりとしている怜さんが可愛かった


「ん~、じゃあ来月で行けると思いますよ。
母さんには都合聞いとくんで、早めに決めて怜さんに連絡しますね。
ただ…怜さんは俺のですからね。浮気は絶対許さないんで覚悟してください!」
怜さんの頬を両手で挟み、チュッとキスをする

「あと、色々ビックリすると思いますが、俺にとってのトップシークレットなんで口外しないでくださいね
怜さんだから…教えることなんで…」
意味ありげな言い方に困惑している姿を見て、内心ほくそ笑む





「怜くん、お疲れさま。調子良さそうね」
華やかな笑顔で声を掛けてくる女性
今回の作品のメインキャストであり、僕の相方役の彼女はもうすぐ四十路だというのに、全く年齢がわからない程の若々しさと美貌を周囲に振り撒いていた

「お疲れ様です、静香さん
流石ですね。静香さんのおかげで、撮影もスムーズに進行してますよ」
本日、例の顔合わせを予定している為、出来るだけ進行に支障が出ない事を願いながら挑んだのだが、呆気ないほどスムーズに終わり、予定よりも少し早めに終わることができた

「すみません。今日は外せない用がありますので、お先に失礼させて頂きます」
無難な笑みを浮かべ、早々と現場を離れる


今日の条件は3つ
・必ず車で行くこと
・人気の少ない駐車場で新一を待機せること
・顔合わせの場所は新一に任せること


何故かその3つを念入りに確認させられた
会食の場など、色々候補を見繕っていたが、全て却下されてしまい、彼の母親に良いところを見せる機会を減らされた気がする


待ち合わせの駐車場に向かうと、今朝見た姿とは違い、いつも大学に通う格好をしている彼が待っており

「新一くん、お洒落しなくていいのかい?その格好で?」
変装に近い格好だと前に話していたのに、今その格好なのが気になる

「お疲れ様です。怜さん
今日は無理を言ってごめんなさい。この格好も、どうしても必要なことなんで気にしないで」
大きめの黒縁メガネとボサボサにした髪のせいで、普段見えている少し青みがかった綺麗な瞳が見えない

「さぁ、行きましょうか。」
新一が後部座席に乗り込む
意味がわからなくて困惑しながらも、運転席に乗り込むといつの間にか後部座席にはもう1人乗っており、驚きの余り声が出ない
「さぁ、出発して頂戴!場所は帝国ホテルだから、すぐだと思うけど」

先程挨拶を済ませ、別れたはずの彼女が当たり前のように座っていた
「えっ!?し、静香さん?なんで!?
すみませんが、今日は大切な用があるのでご一緒出来ませんよ」

後ろでニコニコ微笑む2人
何故か雰囲気が似ており、嫌な予感がする
背筋に冷たい汗が流れ落ちるのがわかり、恐る恐る声をかける

「もしかして…新一くんの…」
「その話しは後のお楽しみ♡早く行って頂戴♡」


これ以上は今は聞く事が叶わず、言われるままに帝国ホテルに車を走らせる

当然のように案内された最上階のスイートルーム
来週からの長期ロケまではここで過ごすという話をスタッフから聞いてはいたものの、自分には関係ないと話を流していた
まさか、来ることになるとは予想だにしていなかった





「もー!!新ちゃんなんでそんな野暮ったい格好なの?
さっさとこっちに着替えて、髪も整えてきて!
今日は怜ちゃんが私にご挨拶してくれるって言ってたから色々張り切ったのに~」
部屋に着いて早々、普段とは全然違うキャピキャピした声が響いていた

「当たり前じゃん!この格好じゃないと、母さんとの関係が周囲に勘付かれるに決まってるじゃん
俺、顔立ちは母さん似だし…」
文句を言いつつ、身なりを整えに行く

怜さんはまだ頭が追いつかないのか、惚けているのを見てクスッと笑ってしまう
「れーいさん、とにかく座ってください。お疲れでしょ?
母さんの本来のテンションはまだまだですから、とりあえず落ち着きましょ?」


身支度が整い、ソファに座ろうとしたが何故か怜さんの隣にべったりくっ付いて座る母さんを見てイラッとする
「怜さん、浮気はしないって約束じゃないですか
母さんも早く退いて!向かいに座る!そこは俺専用の席です!!」
母さんを引き剥がし、怜さんの膝に横座りして首に腕を回して牽制する

そんな俺に驚きつつも嬉しそうにしている怜さんにデコピンをする
「浮気したこと、許さないから。後で覚えててくださいね」

そんなやり取りを微笑ましく見て来る母さんにはぁぁぁっと溜息を漏らし

「新ちゃんは、怜ちゃんのコトが本気で好きなのね♪
変な男だったら全力で潰すつもりだったけど、怜ちゃんなら安心ね♡
あ、でも、新ちゃんのコトをエッチ以外で泣かせたら許さないから♡」
言い方はキャピキャピと軽いのに、内容が物騒だ

「俺が面食いなのも、エッチが好きなのも母さんの遺伝のせいだろ?
若い時からいっぱい喰ってるから、俺の父親が誰かもわからないクセに…」
少し拗ねたように口を尖らせて言うも、母さんは驚いた顔をし

「え?パパはリチャードよ?そりゃ、若い頃から遊んでたけど、新ちゃんのパパは今も昔も、リチャードよ?」

リチャード…、ハリウッドでも有名なあの監督?
なんか、母さんとは仲が良くて恋人って噂のある?

いきなりの衝撃的事実に目を見開いて驚いていたが、怜さんもそれは一緒だったらしく口をパクパクしている

「え?新一くんは静香さんの息子で、お父さんはあのリチャード?
ごめん、驚き過ぎて理解が追いつかない…というか、新一くんもお父さんについては知らなかったんだね…」

「リチャード可哀想…通りで、今回の挨拶の件も連絡を貰ってないって嘆いていたのよね
まぁ、仕方ないわよね。仕事と私にかまけて新ちゃんに会いに来ないのが悪いのよ♪」

頬に手を付いて身をくねらせながら言う母さんに脱力する


「まぁ、2人が結婚する時はちゃんと呼んでね♪
そろそろ息子が居るってのも公表しても問題ないでしょ?」
「いや、問題しかないだろ?
でも、結婚する時はちゃんと母さんと…父さん?には改めて報告しに行くから…」

顔を背けながらも耳まで真っ赤になりながら言い、3人でルームサービスでの食事を楽しんだ




デザートまで堪能し、コーヒーを飲んでいると肩に心地良い重みが乗ってくる
見ると、新一くんが気持ち良さそうに眠っていた

彼なりに色々緊張して疲れていたようだ

起こさないように自分の膝に彼の頭を乗せ、上着を掛けてやる
静香さんは僕たちの様子を嬉しそうに笑みを浮かべながらワインを楽しんでいた

「怜ちゃん、この子かわいいでしょ?私もリチャードも仕事ばっかりで、小さい頃から預けることが多かったから…
早く大人になろうとしちゃってるけど、この子、意外に寂しがり屋さんだから…
でも、こちらからの愛情や信頼を寄せると、同じだけ返そうとしてくれるの。健気に、ただ一生懸命に…
不器用な子だけど、私たちの宝物、大切にしてあげてね。
あ、浮気したら、去勢させちゃうからね♪」

最後まで笑顔で怖いコトを言う義母が出来てしまった怜さんだった



明日からの撮影がいつも以上に緊張感のあるモノになったの言うまでもない
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