上 下
32 / 50
第3章

気づかれる

しおりを挟む
 俺は、

「はい」

 と言って、魔王の前に現れる。

「気づいてたんですね。いつからですか?」

「ここに戻ってきたとき、あの角からお前の服が少し出ていたのに気づいた」

「えっ、じゃあ」


 ということは、ザラにも気づかれてしまった可能性が――。

「それは心配せずともよい」

 魔王が俺の恐怖心を落ち着かせてくれた。


「あやつは気づいていない。ああ見えて結構慎重で小心者だからな。もし気づいていたなら、余にお前の話をすることはなかっただろう」


 慎重で小心者?

 俺を殺そうとする女が?


 だが、実の兄である魔王がそう言うのなら、きっとそうなのだろう。


「で、話と言うのは」

 魔王は言った。

「ザラのことか?」

「ええ、はい」


 俺は頷く。

「その、ザラ様が俺を殺そうとしているという情報が耳に入りまして」

「あやつはなあ……」


 魔王は遠い目をした。

「人間が嫌いなんだ。心底」

「はあ……」


 人間が嫌いなのはどうだって良い。

 というか、俺だってあんまり好きじゃない。

 散々幼馴染やそのメンバーにボロクソ言われてきたし。


 そのせいかまあまあ人間不信である。


 だけど、そのせいで俺が殺されるのは、とばっちりも甚だしい。


「まあ、いろいろあってああなったんだ」


 彼は奥歯にものが挟まったような言い方をする。

「いろいろって」

「詳しい話は、余の口からは言えぬ。だが、余としてもお前を失うのはかなり痛手だ。余が直々にお前を守ってやろう」

「ありがとうございます」


 何個か引っかかるような部分はあったが、とりあえず俺は魔王からの加護が受けられるようになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...