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第2章

苦悩① ~ガブリエル視点~

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 俺――魔王軍兵長ガブリエルには、いくつか悩みがある。


 部下が弱っちいのしかいない。

 部下が敬語を使わない。

 部下の中に修練をサボるやつがいる。

 もうちょっと給料を上げてほしい。

 給料のわりに仕事量が多い。

 それを愚痴ったら、新人のケントに、

「魔王様に言えば良いじゃないですか」

 と言われる。


 ……そういう問題じゃねぇんだよな。


 なんつーか、愚痴を聞いてくれるだけで良いのに。

「言えば良いじゃないですか」

 じゃねぇんだよな。

 そういう具体的な答えを求めてねぇんだよ、俺は。


 ――とまあ。


 学生時代「能天気野郎」とあだ名をつけられたことのある俺だが、現在はいろいろ悩みの尽きない日々を送っている。


 だが、目下一番俺の胃を痛めているのは。


 魔王様の3妹君だ。


 長妹のザラ様。

 次妹のマチルダ様。

 そして、末妹のライラ様。


 先代の魔王様の娘として生まれ、れっきとした素晴らしい血を引く高位魔族。

 幼いころから蝶よ花よと大切に育てられ、兄である現魔王様が即位されたあとも、特別可愛がられている。


 おかげで、全員性格が酷い。

 違うベクトルでヤバい。


 超わがままお姫様。


 特にライラ様は、兵士の俺たちを振り回し、怪我をさせるなどの実害を出している。


 その我がままで高飛車なじゃじゃ馬ライラ様を、どうにかしたのが新人のケントだ。


 あいつは侮れねぇ。

 パッと見、ただの細っこい人間のガキにしか見えねぇが、その実魔界最強の軍隊である俺たちを一瞬で倒した逸材。

 それなりに強いのに、勇者パーティでのけ者にされていたんだから、驚く。


 ケント以上に勇者が強いのか、それとも勇者パーティメンバーの見る目がないのか。


 ともかく話を変えると、今俺はある人物に呼ばれ、その方の部屋に向かっている。


 エレベーターを使って最上階に向かい、下とは違って広く豪奢な廊下を歩く。

 その部屋に近づくにつれ、俺の心の中はだんだん重くなっていく。


 今すぐここから逃げ出したい。


 しかし、そんなことをすれば確実に殺される。

 裏切った者は、血の果てまで追いかけて処分する。


 今から会うその方は、そんなことを平気でやってのける、恐ろしい人物だ。


 
 
 
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