28 / 72
第3章
ドレス
しおりを挟む
魔王は宣言通り、私と一緒にあの部屋にに戻って、ドレスのデザインを勝手に選び始めた。
ゾーイさんや針子たちが、魔王に対してびっくりする位丁寧な態度を取っているのが見てて少しおかしかった。
「魔王様、こちらにお座りくださいませ」
「魔王様、何かお飲みになられますか?」
「魔王様、本日はお越しいただきありがとうございます」
「魔王様、これがまず1枚目のデザインでございます。いかがでしょうか?」
「魔王様のご意見、とても参考になりました。さすがは魔王様ですね」
「次はこちらのデザインでございます。いかがでしょうか?」
こんな調子で続くもんだから、正直魔王がいない方が早く終わるんじゃないだろうかと思った。
だが、その馬鹿丁寧な態度を、魔王はあまり好んでいないらしい。
「その調子だと1年あっても終わらないぞ。早く渡してこい」
「は、はい!」
魔王に命令されて焦った針子たちは、物凄いスピードで紙を彼に渡していく。
魔王は次々とそれを受け取り、素早く2つの山に分けていった。
あっという間に大きな山が2つ出来上がり、その1つを外へ運び出し、もう1つをもう一度精査し始める。
時々停止したり、私とその紙を見比べたりなんかしていたが、それでも私1人が確認していたときよりは圧倒的に早い。
私は彼の仕事の速さに驚いて、その場で立ち尽くすばかりだった。
ただ腹立つのは、私とそのドレスを見比べて鼻で笑うあの男の顔だ。
どうせ失礼極まりないことでも考えているのだろう。
圧倒的な速度ですべてのデザインを確認し、魔王は5枚のデザインを選んだ。
私が当初候補に挙げていたものとは全然違うデザインだった。
「さすがですね、魔王様!」
「とてもアイラ様にお似合いのデザインかと」
「魔王様のセンスは本当に素晴らしいです!」
まるで私のセンスがないみたいな言い方をしているが、私は懐が広いので気にしないことにした。
これでようやく終わりかと大きく伸びをし、部屋を出ようとすると、
「まだですよ、アイラ様」
と、ゾーイさんに止められた。
「まだですか?」
「仮縫いがあるので」
「仮縫い?」
どういうことだろうか。
ひょっとして、今からここで作るのか?
だから針子がここに?
一気に頭痛が酷くなったが、私が想定しているものとは違う「仮縫い」だった。
ゾーイさんは杖を取り出し、私に向かって軽く振る。
光に包み込まれ、すると先ほどのデザインを催したドレスが私の身体に纏わりついた。
宝石のようなブルーのドレス。
「へえ」
私は感心する。
「さすが魔法」
「いかがでしょうか?」
ゾーイさんは、魔王に尋ねる。
「うむ」
魔王は顎に手を当てながら言った。
「馬子にも衣裳だな」
「失礼過ぎない?」
ゾーイさんや針子たちが、魔王に対してびっくりする位丁寧な態度を取っているのが見てて少しおかしかった。
「魔王様、こちらにお座りくださいませ」
「魔王様、何かお飲みになられますか?」
「魔王様、本日はお越しいただきありがとうございます」
「魔王様、これがまず1枚目のデザインでございます。いかがでしょうか?」
「魔王様のご意見、とても参考になりました。さすがは魔王様ですね」
「次はこちらのデザインでございます。いかがでしょうか?」
こんな調子で続くもんだから、正直魔王がいない方が早く終わるんじゃないだろうかと思った。
だが、その馬鹿丁寧な態度を、魔王はあまり好んでいないらしい。
「その調子だと1年あっても終わらないぞ。早く渡してこい」
「は、はい!」
魔王に命令されて焦った針子たちは、物凄いスピードで紙を彼に渡していく。
魔王は次々とそれを受け取り、素早く2つの山に分けていった。
あっという間に大きな山が2つ出来上がり、その1つを外へ運び出し、もう1つをもう一度精査し始める。
時々停止したり、私とその紙を見比べたりなんかしていたが、それでも私1人が確認していたときよりは圧倒的に早い。
私は彼の仕事の速さに驚いて、その場で立ち尽くすばかりだった。
ただ腹立つのは、私とそのドレスを見比べて鼻で笑うあの男の顔だ。
どうせ失礼極まりないことでも考えているのだろう。
圧倒的な速度ですべてのデザインを確認し、魔王は5枚のデザインを選んだ。
私が当初候補に挙げていたものとは全然違うデザインだった。
「さすがですね、魔王様!」
「とてもアイラ様にお似合いのデザインかと」
「魔王様のセンスは本当に素晴らしいです!」
まるで私のセンスがないみたいな言い方をしているが、私は懐が広いので気にしないことにした。
これでようやく終わりかと大きく伸びをし、部屋を出ようとすると、
「まだですよ、アイラ様」
と、ゾーイさんに止められた。
「まだですか?」
「仮縫いがあるので」
「仮縫い?」
どういうことだろうか。
ひょっとして、今からここで作るのか?
だから針子がここに?
一気に頭痛が酷くなったが、私が想定しているものとは違う「仮縫い」だった。
ゾーイさんは杖を取り出し、私に向かって軽く振る。
光に包み込まれ、すると先ほどのデザインを催したドレスが私の身体に纏わりついた。
宝石のようなブルーのドレス。
「へえ」
私は感心する。
「さすが魔法」
「いかがでしょうか?」
ゾーイさんは、魔王に尋ねる。
「うむ」
魔王は顎に手を当てながら言った。
「馬子にも衣裳だな」
「失礼過ぎない?」
0
お気に入りに追加
360
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる