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第2章
城内
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私は魔王に案内されて、城の内部に入る。
外から見てもそうだったが、中から見ても想像通り、城の内装ははおどろおどろしかった。
よくわからないとぐろを巻いた蛇の像や、先ほどの兵士と同じような格好をした石像が、均等に壁に沿って並べられていた。
気分が悪くなりそうなほど気味の悪い絵画が、壁に飾られている。
よくよく見ると、城の壁はなぜか時々動いていた。
まるで心臓の鼓動のように。
「杞憂かもしれないけど」
私は隣を歩く魔王に問うた。
「ここの壁、生きているっていうんじゃないでしょうね」
「生きていると言えるし、生きていないとも言える」
「どういうこと?」
「初代がお造りになられた城なのだ。長い話になるぞ」
「簡潔にまとめて」
「初代が魔族の頂点に立ったとき、多数の犠牲が出たのだ。その死体と初代の魔力を合わせて、この城が出来た」
「な、なるほど……」
思いのほかヘビーな話だった。
「歴史があるのね」
「当たり前だ」
魔王はドヤ顔で言った。
「魔族は、人間族が誕生するはるか昔から既にこの世界ににいたのだからな」
「へえ、知らなかった」
「教養がないな、お前は」
「違うわよ」
私はむっとする。
「人間と魔族の成り立ちと関係なんて、学校じゃ習わないもの。私たちの住む町では、魔族がどれぐらい危ない存在なのかと言うことしか、学ばなかったわ」
「ほう。人間は随分と小賢しいようだな。自分たちの子孫に本当のことを教えず、都合の良いことだけを伝承するのか」
「魔族はそうではないの?」
「そんなわけあるか。我々は互いを思いやって生きているのだ。歴史は、思いやりの中でも重要な事柄なのだ。どんな負の歴史だろうであろうが、残すのは我々の役目で、それを知るのは未来の世代の役目だ」
「ふーん」
ちゃんとその辺はしっかりしているんだな。
失礼に値するとは思うが、結構意外だった。
町へいたころの私は、魔族という種族は野蛮で、粗雑な生き物だと思っていたのだ。
「ねえ」
私は、また尋ねた。
「今はどこへ向かっているの?」
魔族は私たち人間よりも、平均的に身長が高いようで、城の扉や何もかもが、私が普段見ているものよりと倍大きかった。
それに、魔王は私の歩くスピードなど気遣ってくれない。
また疲れてきた。
「余の部屋だ」
「魔王の?」
「魔王様と呼べと言っているだろうーー急にお前を娶ることになったのだから、お前の自室など用意していない。だから特別に、しばらくの間は余の部屋で過ごさせてやる」
「はあ……。ありがとう」
どうやら、この男は私と本気で結婚するらしい。
マジかよ。
言い出しっぺの私が言うのもなんだけど。
外から見てもそうだったが、中から見ても想像通り、城の内装ははおどろおどろしかった。
よくわからないとぐろを巻いた蛇の像や、先ほどの兵士と同じような格好をした石像が、均等に壁に沿って並べられていた。
気分が悪くなりそうなほど気味の悪い絵画が、壁に飾られている。
よくよく見ると、城の壁はなぜか時々動いていた。
まるで心臓の鼓動のように。
「杞憂かもしれないけど」
私は隣を歩く魔王に問うた。
「ここの壁、生きているっていうんじゃないでしょうね」
「生きていると言えるし、生きていないとも言える」
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「簡潔にまとめて」
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「な、なるほど……」
思いのほかヘビーな話だった。
「歴史があるのね」
「当たり前だ」
魔王はドヤ顔で言った。
「魔族は、人間族が誕生するはるか昔から既にこの世界ににいたのだからな」
「へえ、知らなかった」
「教養がないな、お前は」
「違うわよ」
私はむっとする。
「人間と魔族の成り立ちと関係なんて、学校じゃ習わないもの。私たちの住む町では、魔族がどれぐらい危ない存在なのかと言うことしか、学ばなかったわ」
「ほう。人間は随分と小賢しいようだな。自分たちの子孫に本当のことを教えず、都合の良いことだけを伝承するのか」
「魔族はそうではないの?」
「そんなわけあるか。我々は互いを思いやって生きているのだ。歴史は、思いやりの中でも重要な事柄なのだ。どんな負の歴史だろうであろうが、残すのは我々の役目で、それを知るのは未来の世代の役目だ」
「ふーん」
ちゃんとその辺はしっかりしているんだな。
失礼に値するとは思うが、結構意外だった。
町へいたころの私は、魔族という種族は野蛮で、粗雑な生き物だと思っていたのだ。
「ねえ」
私は、また尋ねた。
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「魔王様と呼べと言っているだろうーー急にお前を娶ることになったのだから、お前の自室など用意していない。だから特別に、しばらくの間は余の部屋で過ごさせてやる」
「はあ……。ありがとう」
どうやら、この男は私と本気で結婚するらしい。
マジかよ。
言い出しっぺの私が言うのもなんだけど。
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