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疑問

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「あそこまで行っておいて、モーリス公爵子息が君と別れない理由?」


 昼休み。


 いつもの場所で、いつものように寝っ転がっていたギルバートに尋ねてみた。


「なんで俺が、その答えを知っているとでも思ったんだ?」

「同じ性別でしょ? なら、私よりもあの人の考えていることはわかるんじゃない?」

「あのなあ」


 ギルバートは、深いため息をついた。

 それはもう、物凄く。


「アナスタシア。君、俺を馬鹿にしてるのか?」


 その声がかなり苛立って聞こえた。


 別に怒らせたかったわけではないので、私はすぐに謝罪する。

「ごめんなさい。馬鹿にしたわけじゃないの」

「なら、俺とアレを一緒にするのは辞めてくれ。同じ性別だってことさえ嫌なんだから」


 ギルバートは、かなりモーリスを毛嫌いしているらしい。


「当然だろ」

 ギルバートは言った。

「人前で堂々と浮気をするような奴、人間とは思えない」

「まあ、それは同感ね」


 前世も今世も、浮気や不倫をする人間の考えることはまったくわからない。

 一体どういう思考回路をしているのか、まるで見当もつかない。


「ああいう奴、心底無理なんだ」

 吐き捨てるようにして呟く。

「他人のことを気遣えない、自己中心的な人間は」


 ギルバートは、過去に浮気で何か嫌な思いでもしたのだろうか。


 なんて邪推はよそう。

 私たちはただの眠り友達で、それ以上でもそれ以下でもない。


「ふうん。だから、私を手伝ってくれたのね」

 過去を詮索する代わりに、私はきちんとお礼を言う。

「どうもありがとう」

「どういたしまして」

 ギルバートは少し微笑んだ。

「それと、さっきの質問だが……。1つだけ、思い当たるものがある」

「何?」

「君のご両親、モーリスの家に多額の出資をしていないか?」


 
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