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眠り姫
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睡眠というのは、本当に素晴らしい。
常々そう思っている。
春眠暁を覚えずなんて言葉が存在するが、私にとっては「春夏秋冬朝昼晩」暁を覚えずだ。
年がら年中眠り続ける私のことを、「学園の眠り姫」なんていうあだ名をつけた人がいるらしいが。
私にとってはどうでも良いことだ。
それより、そんなことを考えている暇があったら眠っていたい。
特に、学園での私のお気に入り睡眠スポットは、中庭にあるガゼボだ。
真っ白くて屋根つきのパビリオンだが、名前の嫌な音の響きはさておき、睡眠にちょうど良い仕様となっている。
私は毎日学園に持ってきている枕と毛布を持ってガゼボに向かい、昼休みはそこのベンチに寝っ転がって睡眠を取っていた。
今日もそうしようと中庭に到着するとーー。
先約がいる。
またか。
私はため息をついた。
最近、よく出くわす人だろう。
私は彼に近づき、声をかけた。
「ごきげんよう」
枕も毛布も使わずに寝っ転がっていた男子生徒は、私の声を聞いて起き上がった。
「ごきげんよう、眠り姫」
私は彼の名前を知らないし、向こうも多分私のことは知らない。
彼は、私を「眠り姫」と呼ぶ。
背の高く麗しい容姿は、恐らく世の女性たちを、あっという間に虜にするだろう。
彼には、そんな不思議な魅力があった。
まあ、私は寝れるならどうだって良いんだけど。
「今日もここ、使う気でいるのか?」
「当然でしょ」
私は自分の睡眠欲を邪魔され、ちょっとイライラしている。
「ちょっと端に移動して。私もそこに寝るわ」
ベンチは幅が広くて眠るのに最高だが、いかんせん1つしかない。
さすがの私も、先客を退かせるほど図々しくはない。
私は無理やり男を移動させ、その狭い隙間に潜り込んだ。
「……良いのか?」
毎度のことながら、男子生徒は戸惑っている。
当然、外とはいえ男女が同じ場所で眠るのはどうかと思う人間もいるだろう。
「未婚の男女だぞ」
「大丈夫でしょ」
私は枕に身を沈め、小さくあくびをした。
「ここ、学園でしょ? 間違いが起こるはずもないしーーそれに私、眠れれば良いの」
常々そう思っている。
春眠暁を覚えずなんて言葉が存在するが、私にとっては「春夏秋冬朝昼晩」暁を覚えずだ。
年がら年中眠り続ける私のことを、「学園の眠り姫」なんていうあだ名をつけた人がいるらしいが。
私にとってはどうでも良いことだ。
それより、そんなことを考えている暇があったら眠っていたい。
特に、学園での私のお気に入り睡眠スポットは、中庭にあるガゼボだ。
真っ白くて屋根つきのパビリオンだが、名前の嫌な音の響きはさておき、睡眠にちょうど良い仕様となっている。
私は毎日学園に持ってきている枕と毛布を持ってガゼボに向かい、昼休みはそこのベンチに寝っ転がって睡眠を取っていた。
今日もそうしようと中庭に到着するとーー。
先約がいる。
またか。
私はため息をついた。
最近、よく出くわす人だろう。
私は彼に近づき、声をかけた。
「ごきげんよう」
枕も毛布も使わずに寝っ転がっていた男子生徒は、私の声を聞いて起き上がった。
「ごきげんよう、眠り姫」
私は彼の名前を知らないし、向こうも多分私のことは知らない。
彼は、私を「眠り姫」と呼ぶ。
背の高く麗しい容姿は、恐らく世の女性たちを、あっという間に虜にするだろう。
彼には、そんな不思議な魅力があった。
まあ、私は寝れるならどうだって良いんだけど。
「今日もここ、使う気でいるのか?」
「当然でしょ」
私は自分の睡眠欲を邪魔され、ちょっとイライラしている。
「ちょっと端に移動して。私もそこに寝るわ」
ベンチは幅が広くて眠るのに最高だが、いかんせん1つしかない。
さすがの私も、先客を退かせるほど図々しくはない。
私は無理やり男を移動させ、その狭い隙間に潜り込んだ。
「……良いのか?」
毎度のことながら、男子生徒は戸惑っている。
当然、外とはいえ男女が同じ場所で眠るのはどうかと思う人間もいるだろう。
「未婚の男女だぞ」
「大丈夫でしょ」
私は枕に身を沈め、小さくあくびをした。
「ここ、学園でしょ? 間違いが起こるはずもないしーーそれに私、眠れれば良いの」
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