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第2章
突然
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しかし世の中というのは、なぜこうも上手くはいかないのだろうか。
私としては悪役令嬢レティシアとしての努力は一切せず、散々甘い蜜を吸った挙句に上手いこと逃げて市井でのんびり過ごすのが夢だけれど。
そのためにはあの王子や主人公周辺の人間とは関わらない方向性で行きたかった。
なのに、仲良くなった友人たちのグループに現れたのは馬鹿で考えなしのアホ王子(幼少期)で、そのアホさ加減のせいで幼い友人たちの危険が訪れようとしていた。
そのせいで私はウィリアム王子を説得することを余儀なくされたわけだ。
さあもうこれで連中とはおさらば。
これからは公爵家の財産を食い潰すだけ食い潰そう――。
「は?」
私はテリアの話を聞いて、思い切り顔をしかめた。
「何ですって?」
「ええっとですね……」
テリアは、至極申し訳なさそうな顔で言った。
「旦那様がお呼びです」
「私体調悪いの。ごめんなさい」
「体調が悪くとも、例え這いつく待ってでも来るようにとの連絡でございまして」
「あらそうなの。でもごめんなさいね。私今這いつくばって移動すると摩擦で屋敷中を火の海にする呪いがかかってて」
言い訳でテリアがちょっと笑ったのを私は見逃さなかった。
「ですがお嬢様、これはとても重要なことなのだそうです」
「あの人がそんな重要なことを? まあ凄い」
私は大袈裟に感服する。
「だいたい子どもを虐めることくらいしか能がないと思っていたのに。成長したのね」
「お嬢様……」
テリアがため息をつく。
「お気持ちは非常に良くわかります。ですが、どうかその気持ちは今押さえてください。他の者に聞かれては困りますから」
「まあそれはそうね。ごめんなさい」
私はペロッと舌を出す。
「でも、私は絶対に行かないわよ。あの人と顔を合わせたところで時間の無駄だし」
「うーん……」
テリアを困らせるのは申し訳ないけど、でもこれは私の意地だ。
「ですが、お嬢様」
テリアは困った表情で言った。
「あなた様の婚約についてのお話だそうですよ」
「えっ」
私としては悪役令嬢レティシアとしての努力は一切せず、散々甘い蜜を吸った挙句に上手いこと逃げて市井でのんびり過ごすのが夢だけれど。
そのためにはあの王子や主人公周辺の人間とは関わらない方向性で行きたかった。
なのに、仲良くなった友人たちのグループに現れたのは馬鹿で考えなしのアホ王子(幼少期)で、そのアホさ加減のせいで幼い友人たちの危険が訪れようとしていた。
そのせいで私はウィリアム王子を説得することを余儀なくされたわけだ。
さあもうこれで連中とはおさらば。
これからは公爵家の財産を食い潰すだけ食い潰そう――。
「は?」
私はテリアの話を聞いて、思い切り顔をしかめた。
「何ですって?」
「ええっとですね……」
テリアは、至極申し訳なさそうな顔で言った。
「旦那様がお呼びです」
「私体調悪いの。ごめんなさい」
「体調が悪くとも、例え這いつく待ってでも来るようにとの連絡でございまして」
「あらそうなの。でもごめんなさいね。私今這いつくばって移動すると摩擦で屋敷中を火の海にする呪いがかかってて」
言い訳でテリアがちょっと笑ったのを私は見逃さなかった。
「ですがお嬢様、これはとても重要なことなのだそうです」
「あの人がそんな重要なことを? まあ凄い」
私は大袈裟に感服する。
「だいたい子どもを虐めることくらいしか能がないと思っていたのに。成長したのね」
「お嬢様……」
テリアがため息をつく。
「お気持ちは非常に良くわかります。ですが、どうかその気持ちは今押さえてください。他の者に聞かれては困りますから」
「まあそれはそうね。ごめんなさい」
私はペロッと舌を出す。
「でも、私は絶対に行かないわよ。あの人と顔を合わせたところで時間の無駄だし」
「うーん……」
テリアを困らせるのは申し訳ないけど、でもこれは私の意地だ。
「ですが、お嬢様」
テリアは困った表情で言った。
「あなた様の婚約についてのお話だそうですよ」
「えっ」
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