どう頑張っても死亡ルートしかない悪役令嬢に転生したので、一切頑張らないことにしました

第2章

その後②

　執事長はあんなに怒鳴り散らかしていたが、どうやらその件を、両親たちに報告することはしなかったらしい。


「あの男は、女子どもには厳しけれど、ただの小心者ですからね」

　テリアは言った。

「旦那様たちに報告すれば、自分の責任も問われることになると思ったんでしょうね。ですが、あの男の言うことも一理ありますよ」


　彼女は心配そうに目を細める。

「町の子どもたちとお友達になれたのは結構ですが、お嬢様は公爵令嬢。お嬢様の立場を知って、誘拐なんていう恐ろしいことを企む者もいるかもしれません。ですから、あまり外で遊ばないように」


　彼女はどうやら、心の底から私のことを心配してくれているらしい。


　その気持ちは凄く嬉しい。

　私はほとんど家族から捨てられている身だし、周りの大人たちも、私のことを見ようともしてくれない。


　そんな中で、彼女だけが「レティシア・オークレール」を大事にしてくれている。

　どれほど心強いことだろうか。


　でも、私は彼女との約束を破り、何度も屋敷から抜け出してみんなと遊ぶようになった。


　彼女には悪いけど、子どもには子どものコミュニティがある。

　それに、外へ出れば町の人との繋がりが出来る。


　ほとんど屋敷の中で孤立している私には、そういうネットワークが必要不可欠なのだ。




　一緒に遊んでいると、私はだんだんと遊び仲間のことを知るようになった。


　私を仲間に誘ってくれたジムは、明るく活発な少年。

　少し照れ屋の、優しい子だった。


　もう1人の男の子であるロニーは、しっかりした子だ。

　なんでも詳しくて、賢い。

　始めのころは、何度言っても「様」をつける癖が直らなかったけど。


　それは彼の両親に、貴族と庶民の違いについて叩き込まれていたからだろう。
　

　そして私と同じ女の子のマミは、人見知りだった。

　初対面のときは、あまり私のことを歓迎してくれていないと思っていたけど、そうではなく。

　彼女はただ、人と接するのが少し苦手だっただけみたいだ。


　しばらくの間は4人で遊んでいたが、やがてもう1人の男の子がやってくる。


　今度も、ジムが連れて来てくれた子だった。


「は、初めまして。ウィリーです。よろしくね」


　はにかんだ笑顔を浮かべる少年は、とても綺麗な顔をしていた。