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第1章

動向

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 私は兄にバレぬよう、そっと図書館の一番奥に向かう。


 書籍の並び的に、兄の興味なさそうな部類だった。

 恐らく、彼がこちら側に来ることはないだろう。


 私は本棚の陰に身を潜めつつ、兄の動向を探る。


 数日後は、兄の誕生日である。

 したがって今日、テリア曰く、

「あなたのお兄様のプレゼントを一緒に買いに行くそうです」

 らしいので、私は堂々と図書館を使うことが出来ていたのだ。


 娘の誕生日プレゼントは買ってやらず、息子にだけ買い与えるって、一体どんな毒親だよ。


 そう思いつつも、私はもはや家族に期待などしていないので、有難く今日を自由時間として使おうとしていた。


 ――が。


 なぜだろう。

 なぜ兄は、今図書館にいるんだ?


 まだみんなが出かけてから数時間くらいしか経っていない。


 もしや、もう買い物が終わったのか?


 それは後でテリアに聞いてみるとして、現在兄はぶらぶらと本棚を物色している。

 私より4つ上の兄だが、まだ背は本棚の一番上に届かない。

 だから、兄の代わりに本を取り出すために1人の執事が一緒に付き添っていた。


 兄は彼に命令しながら、自分の2倍ほどある本棚の間を練り歩いている。


 彼の様子を伺いながら、私はだんだんとムカムカしてきた。


 なんで私は、こいつにバレないように隠れているんだろう。

 この性格の悪い兄と関わりたくないが、だからと言って、何もしていない私がビビって逃げるのは違う。

 私は悪くない。

 悪いのは、兄を含めた家族だ。


 私は怯える必要がない。

 堂々としたって問題ないのに。


 どうして私は、兄から逃げているのだろうか。


 私はなんだか無性に腹が立ち、その場にあった本を適当に取った。

 その場で座り込み、私はパラパラと本をめくる。


 私は逃げない。

 逃げてやるか。


 向こうがなんか文句言ってきたら、面と向かって対応すれば良いんだ。


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