135 / 135
話④
しおりを挟む
「えっ?」
「私はね、フィルが使用人でも、貴族でも、ただのフィルでも。なんでも良いのよ」
フィルは目を丸くしていた。
「フィルはフィルじゃない。立場なんて関係ないと思ってるわ」
私はずっと、フィルが使用人として徹するのが不思議で仕方がなかった。
他のメイドや執事にはそう思わないというのに、なぜか。
一緒に育った関係だからなのかもしれない。
「私はね、フィルにはフィルらしく生きていてほしいと思ってたの。ずっと。使用人という立場としてではなく」
「それは……」
フィルの声は震えていた。
「俺を捨てる気なのか?」
「そういう意味じゃないわ。なんて言えば良いのかしら」
私は少し考える。
「私はね、フィルが使用人でも、例えば王様でも良いのよ。どんな立場であっても、私はフィルと一緒にいたいと思っている。だってフィルはフィルだから」
私はフィルに立場など気にせず、好きに生きてほしいと思っていた。
要するに、私はフィルに使用人としての立場を求めているわけじゃなかったのだ。
「あなたにはあなたでいてほしいの。フィルが使用人でいたいと心から願うなら私は別に止めやしないわ。だけど、そういう理由で使用人でいたいというなら、私は反対するわ」
「……」
「だって考えてみてちょうだい。あなた男爵なのよ? 爵位を持っているという点では、私よりも立場が上だわ」
「……お嬢様は、俺が使用人じゃなくても良いのか?」
「私、そんなこと一言も口にしたことないわよ」
私は苦笑した。
やっぱり頑固だなあ。
そう言ったところは殿下に似ている。
フィルは怒ると思うけど。
「フィルが一緒にいてくれるなら、別に使用人じゃなくても良いのよ。同級生でもなんでも。大袈裟に言えば、王族でも庶民でも良いの。恋人は――まだ考えられないけど」
「王族……」
フィルは呟いた。
「そうか。なんでも良かったのか」
「ええ、そうよ」
「わかった」
フィルは立ち上がった。
「ごめん、お嬢様。変なこと聞いて」
「いいえ。私の気持ち、わかってくれた?」
「ああ」
フィルは頷く。
「あんたの気持ちも。……俺がこれからどうするべきかも」
「私はね、フィルが使用人でも、貴族でも、ただのフィルでも。なんでも良いのよ」
フィルは目を丸くしていた。
「フィルはフィルじゃない。立場なんて関係ないと思ってるわ」
私はずっと、フィルが使用人として徹するのが不思議で仕方がなかった。
他のメイドや執事にはそう思わないというのに、なぜか。
一緒に育った関係だからなのかもしれない。
「私はね、フィルにはフィルらしく生きていてほしいと思ってたの。ずっと。使用人という立場としてではなく」
「それは……」
フィルの声は震えていた。
「俺を捨てる気なのか?」
「そういう意味じゃないわ。なんて言えば良いのかしら」
私は少し考える。
「私はね、フィルが使用人でも、例えば王様でも良いのよ。どんな立場であっても、私はフィルと一緒にいたいと思っている。だってフィルはフィルだから」
私はフィルに立場など気にせず、好きに生きてほしいと思っていた。
要するに、私はフィルに使用人としての立場を求めているわけじゃなかったのだ。
「あなたにはあなたでいてほしいの。フィルが使用人でいたいと心から願うなら私は別に止めやしないわ。だけど、そういう理由で使用人でいたいというなら、私は反対するわ」
「……」
「だって考えてみてちょうだい。あなた男爵なのよ? 爵位を持っているという点では、私よりも立場が上だわ」
「……お嬢様は、俺が使用人じゃなくても良いのか?」
「私、そんなこと一言も口にしたことないわよ」
私は苦笑した。
やっぱり頑固だなあ。
そう言ったところは殿下に似ている。
フィルは怒ると思うけど。
「フィルが一緒にいてくれるなら、別に使用人じゃなくても良いのよ。同級生でもなんでも。大袈裟に言えば、王族でも庶民でも良いの。恋人は――まだ考えられないけど」
「王族……」
フィルは呟いた。
「そうか。なんでも良かったのか」
「ええ、そうよ」
「わかった」
フィルは立ち上がった。
「ごめん、お嬢様。変なこと聞いて」
「いいえ。私の気持ち、わかってくれた?」
「ああ」
フィルは頷く。
「あんたの気持ちも。……俺がこれからどうするべきかも」
3
お気に入りに追加
7,113
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
条件付きチート『吸収』でのんびり冒険者ライフ!
ヒビキ タクト
ファンタジー
旧題:異世界転生 ~条件付きスキル・スキル吸収を駆使し、冒険者から成り上がれ~
平凡な人生にガンと宣告された男が異世界に転生する。異世界神により特典(条件付きスキルと便利なスキル)をもらい異世界アダムスに転生し、子爵家の三男が冒険者となり成り上がるお話。 スキルや魔法を駆使し、奴隷や従魔と一緒に楽しく過ごしていく。そこには困難も…。 従魔ハクのモフモフは見所。週に4~5話は更新していきたいと思いますので、是非楽しく読んでいただければ幸いです♪ 異世界小説を沢山読んできた中で自分だったらこうしたいと言う作品にしております。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました
飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。
令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。
しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。
『骨から始まる異世界転生』の続き。
転生幼女。神獣と王子と、最強のおじさん傭兵団の中で生きる。
餡子・ロ・モティ
ファンタジー
ご連絡!
4巻発売にともない、7/27~28に177話までがレンタル版に切り替え予定です。
無料のWEB版はそれまでにお読みいただければと思います。
日程に余裕なく申し訳ありませんm(__)m
※おかげさまで小説版4巻もまもなく発売(7月末ごろ)! ありがとうございますm(__)m
※コミカライズも絶賛連載中! よろしくどうぞ<(_ _)>
~~~ ~~ ~~~
織宮優乃は、目が覚めると異世界にいた。
なぜか身体は幼女になっているけれど、何気なく出会った神獣には溺愛され、保護してくれた筋肉紳士なおじさん達も親切で気の良い人々だった。
優乃は流れでおじさんたちの部隊で生活することになる。
しかしそのおじさん達、実は複数の国家から騎士爵を賜るような凄腕で。
それどころか、表向きはただの傭兵団の一部隊のはずなのに、実は裏で各国の王室とも直接繋がっているような最強の特殊傭兵部隊だった。
彼らの隊には大国の一級王子たちまでもが御忍びで参加している始末。
おじさん、王子、神獣たち、周囲の人々に溺愛されながらも、波乱万丈な冒険とちょっとおかしな日常を平常心で生きぬいてゆく女性の物語。
乙女ゲーム攻略対象者の母になりました。
緋田鞠
恋愛
【完結】「お前を抱く気はない」。夫となった王子ルーカスに、そう初夜に宣言されたリリエンヌ。だが、子供は必要だと言われ、医療の力で妊娠する。出産の痛みの中、自分に前世がある事を思い出したリリエンヌは、生まれた息子クローディアスの顔を見て、彼が乙女ゲームの攻略対象者である事に気づく。クローディアスは、ヤンデレの気配が漂う攻略対象者。可愛い息子がヤンデレ化するなんて、耐えられない!リリエンヌは、クローディアスのヤンデレ化フラグを折る為に、奮闘を開始する。
ルピナスの花束
キザキ ケイ
BL
王宮の片隅に立つ図書塔。そこに勤める司書のハロルドは、変わった能力を持っていることを隠して生活していた。
ある日、片想いをしていた騎士ルーファスから呼び出され、告白を受ける。本来なら嬉しいはずの出来事だが、ハロルドは能力によって「ルーファスが罰ゲームで自分に告白してきた」ということを知ってしまう。
想う相手に嘘の告白をされたことへの意趣返しとして、了承の返事をしたハロルドは、なぜかルーファスと本物の恋人同士になってしまい───。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる