124 / 135
状況説明
しおりを挟む
簡潔に言うと、あの罠を張ったのは私だ。
木々の間を利用して、蔓を繋ぎ合わせて中央部分に大きな石を設置した。
大きな石というか、ほぼ岩みたいなサイズのものを木の上まで持っていくのには苦労したが、蔓で作った網を駆使してどうにかこうにか作った代物である。
構造は簡単。
地面すれすれに設置した蔓の縄に引っかかると、木の枝が折れて石が降ってくるような仕組みだ。
至極簡易的な罠だが、あの我を忘れていた男になら引っかかるだろうと踏んだ。
私はわざと音を立てて近くにおびき寄せ、レナの父親を嵌めた。
まさかこんなに上手く行くとは。
今思えば、あんなド素人が見様見真似で作った狩り用の罠を信じた私もどうかと思う。
下手すれば死んでいたかもしれないというのに。
ただ、あの罠について教えてくれた父には感謝しかない。
お父様は狩りが好きで、幼いころは私を良く森に連れ回していた。
王子と婚約してからは、花嫁修業に忙しくてそれどころではなくなってしまったが。
良くそんな幼いころの話を思い出せたと、自分で自分を褒めたくなる。
私の話を聞いたフィルは、膝から崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んだ。
「……なんだよそれ」
「えっ」
「本当、あんたって人は――」
肩と声が震えている。
何か気に障ることでもしたのかと心配したが、どうやらそうではないらしい。
フィルは突然、堰が切れたように笑い出した。
地面に座ったのは、力が抜けて立てなくなったのだろう。
「なんでそんなに笑うのよ」
私はムッとした。
「大変だったのよ。笑いごとじゃないの」
「いや、それはわかってるけどっ」
涙を拭くフィル。
「面白すぎだろ! 男爵を獣みたいに狩るって。さすがだよお嬢様は。あっはははは!」
フィルが大声を出して笑うの、久しぶりに見たな。
馬鹿にされているように見えなくもないけど。
木々の間を利用して、蔓を繋ぎ合わせて中央部分に大きな石を設置した。
大きな石というか、ほぼ岩みたいなサイズのものを木の上まで持っていくのには苦労したが、蔓で作った網を駆使してどうにかこうにか作った代物である。
構造は簡単。
地面すれすれに設置した蔓の縄に引っかかると、木の枝が折れて石が降ってくるような仕組みだ。
至極簡易的な罠だが、あの我を忘れていた男になら引っかかるだろうと踏んだ。
私はわざと音を立てて近くにおびき寄せ、レナの父親を嵌めた。
まさかこんなに上手く行くとは。
今思えば、あんなド素人が見様見真似で作った狩り用の罠を信じた私もどうかと思う。
下手すれば死んでいたかもしれないというのに。
ただ、あの罠について教えてくれた父には感謝しかない。
お父様は狩りが好きで、幼いころは私を良く森に連れ回していた。
王子と婚約してからは、花嫁修業に忙しくてそれどころではなくなってしまったが。
良くそんな幼いころの話を思い出せたと、自分で自分を褒めたくなる。
私の話を聞いたフィルは、膝から崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んだ。
「……なんだよそれ」
「えっ」
「本当、あんたって人は――」
肩と声が震えている。
何か気に障ることでもしたのかと心配したが、どうやらそうではないらしい。
フィルは突然、堰が切れたように笑い出した。
地面に座ったのは、力が抜けて立てなくなったのだろう。
「なんでそんなに笑うのよ」
私はムッとした。
「大変だったのよ。笑いごとじゃないの」
「いや、それはわかってるけどっ」
涙を拭くフィル。
「面白すぎだろ! 男爵を獣みたいに狩るって。さすがだよお嬢様は。あっはははは!」
フィルが大声を出して笑うの、久しぶりに見たな。
馬鹿にされているように見えなくもないけど。
8
お気に入りに追加
7,113
あなたにおすすめの小説
あなたが私を捨てた夏
豆狸
恋愛
私は、ニコライ陛下が好きでした。彼に恋していました。
幼いころから、それこそ初めて会った瞬間から心を寄せていました。誕生と同時に母君を失った彼を癒すのは私の役目だと自惚れていました。
ずっと彼を見ていた私だから、わかりました。わかってしまったのです。
──彼は今、恋に落ちたのです。
なろう様でも公開中です。
夫の浮気相手と一緒に暮らすなんて無理です!
火野村志紀
恋愛
トゥーラ侯爵家の当主と結婚して幸せな夫婦生活を送っていたリリティーヌ。
しかしそんな日々も夫のエリオットの浮気によって終わりを告げる。
浮気相手は平民のレナ。
エリオットはレナとは半年前から関係を持っていたらしく、それを知ったリリティーヌは即座に離婚を決める。
エリオットはリリティーヌを本気で愛していると言って拒否する。その真剣な表情に、心が揺らぎそうになるリリティーヌ。
ところが次の瞬間、エリオットから衝撃の発言が。
「レナをこの屋敷に住まわせたいと思うんだ。いいよね……?」
ば、馬鹿野郎!!
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
【完結】妹にあげるわ。
たろ
恋愛
なんでも欲しがる妹。だったら要らないからあげるわ。
婚約者だったケリーと妹のキャサリンが我が家で逢瀬をしていた時、妹の紅茶の味がおかしかった。
それだけでわたしが殺そうとしたと両親に責められた。
いやいやわたし出かけていたから!知らないわ。
それに婚約は半年前に解消しているのよ!書類すら見ていないのね?お父様。
なんでも欲しがる妹。可愛い妹が大切な両親。
浮気症のケリーなんて喜んで妹にあげるわ。ついでにわたしのドレスも宝石もどうぞ。
家を追い出されて意気揚々と一人で暮らし始めたアリスティア。
もともと家を出る計画を立てていたので、ここから幸せに………と思ったらまた妹がやってきて、今度はアリスティアの今の生活を欲しがった。
だったら、この生活もあげるわ。
だけどね、キャサリン……わたしの本当に愛する人たちだけはあげられないの。
キャサリン達に痛い目に遭わせて……アリスティアは幸せになります!
私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります
せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。
読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。
「私は君を愛することはないだろう。
しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。
これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」
結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。
この人は何を言っているのかしら?
そんなことは言われなくても分かっている。
私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。
私も貴方を愛さない……
侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。
そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。
記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。
この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。
それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。
そんな私は初夜を迎えることになる。
その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……
よくある記憶喪失の話です。
誤字脱字、申し訳ありません。
ご都合主義です。
君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした
せいめ
恋愛
美しい旦那様は結婚初夜に言いました。
「君を愛するつもりはない」と。
そんな……、私を愛してくださらないの……?
「うっ……!」
ショックを受けた私の頭に入ってきたのは、アラフォー日本人の前世の記憶だった。
ああ……、貧乏で没落寸前の伯爵様だけど、見た目だけはいいこの男に今世の私は騙されたのね。
貴方が私を妻として大切にしてくれないなら、私も好きにやらせてもらいますわ。
旦那様、短い結婚生活になりそうですが、どうぞよろしく!
誤字脱字お許しください。本当にすみません。
ご都合主義です。
三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる