そんなに別れたいとおっしゃるなら、承知いたしました

間違い② ～レナの父親視点～

　その件に関しては、嬉しい誤算だった。


　第一王子が自身の婚約者と別れたというちょうど良いタイミングだったというのもあるだろう。

　正直令嬢としては他の女に明らかに負けるレナだったが、そういう素朴さが王子に受けたのかもしれない。


　私と妻は歓喜した。

　
　レナを跡取りにするという目的は叶わなかったが、あの子が第一王子と結婚して王妃になること以上の出世はないだろう。


　我が家は男爵家。

　貴族の中でも最下層の部類だ。


　レナが未来の王妃となれば、私の出世も確約される。

　跡取りなど、レナの子どものうちの1人を引き取れば良いのだ。


　――しかし。

　状況は全く芳しくなかった。


　王子はレナに、

「未来の王妃に」

　などと口だけで、実際は何もしない。


　それどころか、まだあの元婚約者に懸想をしているらしかった。


　しびれを切らしたレナは、元婚約者であるスカーレットを陥れるべく、あの手この手を使う。

　だが底意地の悪いスカーレットは、周囲の人間を使って逆にレナを貶めた。


　鬱陶しい限りだ。


　ただ良かったのは、自分自身が悪い部分もあると気づいていたのだろうか。

　王子に対する制裁は行っていた公爵家であったが、我が家に対してはなんのお咎めもなかった。


　残念なことに、第一王子はもう使い物にならないだろう。

　令嬢を襲った色情魔に、国王は務まらない。


　レナの魅力さえあれば、すぐに他の王子も陥落させられるはずだ――。


　だが。


　公爵家から送られた手紙。

　そこには、明らかに我が家が払えないであろう慰謝料を請求するという旨が記載されていた。