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王族

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 殿下は部屋の外で待機してた使用人たちにすぐ拘束された。


「な、何をする……! お、俺は第一王子――」

「第一王子ともあろうお方が、公爵令嬢を襲うだなんて」


 私は声を震わせる。

「私たちをよほど馬鹿にしたいようですね」

「それはそもそも生まれが違うからだ! 俺は王族で、お前たちは所詮貴族の端くれ。お前たちがこの俺に従わなければならないのはそれが理由だ」

「……面白いことを1つお教えしましょうか?」


 私は殿下に言った。

「この国は、あなた方王族だけが住んでいるわけではないのですよ」

「は?」


 何を当たり前のことを、という顔をするセシル殿下。


「私たち貴族のみならず、数多くの庶民が暮らすのが我が国です。そしてその民草を守るのが王侯貴族の役目」

「守る? ふん」


 殿下は鼻で笑った。

「お前たちごときの低俗な連中を、なぜこの俺が守らねばならん。お前たちはただ未来の国王のために働くのみだ」


「私の言うことが理解出来ないのであれば」


 私はため息をついた。

「あなたはもう一生国王になることは出来ないでしょう」

「不敬だぞ!」

「不敬ではありません。最後通告です――王家とは、民草を守って率いていく存在のこと。それゆえに特別な地位と権力が我々から与えられています。すなわち、あなた方の身分は私たちによって保障されているということ。決してあなた方自身が特別な存在であるわけではありません。私たちと同じ人間なのです」

「だからそれは」

「それを私は何度も婚約者時代に説いてきましたが、ついぞあなたが理解してくれることはなかった――それがこの結果です」


 ティファニーの家、王家の側近として長年仕えてきた由緒正しい家柄だ。

 自分たちが世話になった家の令嬢に手を出そうとすることが、どれほど恩を仇で返す所業なのかが彼にはわからないのだろう。


「今日を持って、あなたは2つの後ろ盾を失うことになります」


 私は宣言した。

「あなたは私たちのことを小さな蟻くらいにしか思っていないようですが。小さな蟻が集えば、東洋に伝わる象という大きな生き物を倒すことが出来る。そのことをお忘れなく」

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