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爵位

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 お父様は、王家から出した条件の他に、もう1つそれをつけ足した。


「我が公爵家の使用人であるフィルに爵位を与え、学園に通う許可を与えてほしい」


 これが、今回の件をなかったことにする我が家からの条件だった。


 最初は王家も渋った。


「貴族でないものに、突然爵位を与えて学園に通わせるなど、あまりにも強引過ぎる。他の貴族も反対するだろう」


 まあ、当たり前の話だ。

 そんな無茶が通るわけない。


 だがお父様は引き下がることなく、

「セシル殿下を近づかせないとおっしゃられていたが、つい先日殿下が我が家に無断で押し入ってきた。そもそもあなた方から言ってこられた約束さえ守られていないのに、娘を学園で1人にしておけるはずがない。それにフィルは元貴族だ。庶民に爵位を与えるという政策を行われていた陛下が、フィルだけにそうしないのは納得がいかない」

 と、王家に物申した。


「しかし、あれは結果を残した者に対する褒美であって――」

「それでは、彼の家に連絡を入れることにする。貴族の子どもであることが証明出来れば、フィルの学園編入の許可が下りるだろう」

「……」

「一体どこの貴族かは知らないが、年齢上フィルは跡取り候補に選ばれてもおかしくない。彼がその貴族の子どもとして復帰すれば、さぞかしその家は後継問題で苦労するだろう」


 少しして、フィルに準男爵の地位を与えるとの通達があった。


 私はフィルに、

「本当に良かったの?」

 と、尋ねた。

「何が?」

「だってフィル、貴族になりたくないんでしょ? 使用人が良いって」

「それはあんたに仕えられるからだ。そのために貴族になる必要があるなら、俺はそうする」

「そう……」


 フィルはそう言ってくれるが、本当にそれで良いのだろうか。

 彼の人生は彼のものだし、私に人生を捧げるのは、いかがなものかと。


「別にそれはあんたの気にするところじゃねぇよ」

 フィルは言った。

「俺の人生は俺が決める」

「……それ、殿下も言ってたわ」

「俺はあの人みたいに、あんたを支配しようとは思ってない。縛りたいとも思っていない。あんたが幸せに生きて行けるように、俺はあんたを守りたい。ただそれだけだ」

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