そんなに別れたいとおっしゃるなら、承知いたしました

爆笑

　その話をしたところ、ティファニーとフィルは大爆笑していた。


「ヤ、ヤバッ……！」

「ちょ、お腹痛いっ」


　ゲラゲラ大声で笑う2人を見て、私は少々驚きを隠せない。


「えっ。私、何か変なこと言った？」


「いやっ、あんたは別に何もしてねぇよ」

「うんうん。スカーレット、あなたはそのままで良いからね」




　私がそう言うと、何か問題でもあったのだろうか、殿下とその恋人は顔を固まらせた。


「話は以上ですか？」

「ス、スカーレット、お前」

「スカーレットではありません。ファミリーネームを」

「……」

　私は恋人の方に顔を向ける。

「あなたも何か言ってやってくださいな。自分の恋人が赤の他人、しかも異性に向かって気軽に声をかけるなんて、嫌だと思いませんか？」

「え、ええっと……」


　恋人は殿下の方を見る。


　しかし殿下はそれに反応することなく、私を鬼のような形相で睨み、

「……そういうところだぞ。そういうところだから、お前は無様にも俺に捨てられたんだ！」

　と言って、立ち去って行った。


　そして、今に至る。


「あの人、あんたにマウント取りたかったんだよ」

　と、フィル。

「マウント？」

「あんたは1人だけど、自分はもう相手がいるぞって。こっちはもうあんたに興味がないんだって言いたかったんじゃねぇの？」

「それを言ってどうするの？」

「さ、さあ……。スカーレットの傷つく顔をもう一度見たかったんじゃないかしら」

　と、ティファニー。


　それはちょっと……。

　ドン引きする。


「あんたが自分のことをまだ好きだと思ってて、ああいう行動したんだと思うぜ」

「だけど、それに対して、

『赤の他人のファーストネームを呼ぶな』

　なんて突き放されてしまったんだもの。それで拍子抜けしたんでしょう」

「はあ……」


　結局あの人は何がしたかったんだろうか。