そんなに別れたいとおっしゃるなら、承知いたしました

学園

　殿下に別れを告げてから、次の登校日。


　すでに私と殿下が別れたことは、学園中に広まっていた。


　ティファニーかウォルターがバラした……わけではもちろんなく。

　多分、殿下がみんなに言い触らしたのだろう。


　あの殿下ならそうする。


　面白いのは、彼の中では、

「自分がスカーレットをこっぴどく振ってやった」

　ということになっているらしく、その意そのままが生徒や教師たちの耳に入っていた。


　まあ、大まかには間違っていないので、私は訂正せずにその噂を捨て置くことにした。


「スカーレットちゃん、セシルと別れたのー？」

「カワイソー（笑）」

「俺とはどう？　良くない？　優しいよ」

「嘘つけって」

「スカーレットちゃんと結婚すれば、公爵になれるかもしれないしね」

「ぎゃははは。サイテー」


　と、私をからかう殿下の友人たちを無視する。


　殿下と別れてもなお、この人たちに絡まれるのは本当に厄介だ。


　他にも、

「あの、本当なんですか……？　殿下と別れたというのは」

「失礼でしたら、本当に申し訳ありません」


　と、何人かのクラスメイト達が恐る恐る尋ねてくる。


「ええ、そうですわ」

　その度に、私はこともなげに答えた。


「ま、まあ」

「なんてこと」

　口を押える生徒たち。


「ご心配いただき誠にありがとうございます。私は平気ですわ」


　晴れやかな笑顔を彼らに向けた。

「その話はつい先日したことですので、まだ正式に婚約破棄したわけではありません。一体どうしてこんなに話が広がっているのかわかりませんが……。ともかく、正式な通達はまた後日皆様のところへ行くと思いますので、ご迷惑をおかけしますが、その際はよろしくお願いいたします」


「ええ、わかりましたわ」

「気を落とさずに。また良い方が現れることを願っております」