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注意②
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ティファニーは、殿下を空き教室に連れて行った。
「で、話は? 手短に言ってほしいんだけどさ」
と、殿下。
「では、手短に言わせていただきますわ」
ティファニーは言った。
「いい加減にしてくださいませ。マジで」
「は?」
「あなたは第一王子ですよね? なら、それらしい行動を取ってくださいっていう話です。学校内で友人たちと大声で騒いだり、他人にちょっかいかけたりしないでください」
「君には関係ないだろ」
「大いに関係あります。というか、生徒たちは迷惑しているんです」
「迷惑」という言葉に敏感に反応する殿下。
「生徒たちって? 何それ、主語大き過ぎねぇ? なんの根拠があってそう言うわけ?」
「私、実は生徒会役員なんです」
ティファニーは手元に持っていた資料を殿下に手渡す。
「は?」
「これは、数年前から生徒会で始めた目安箱という制度なんですが」
殿下は、なんだそれという顔をする。
「これは、学園内で起こる問題やその解決策を生徒個人が匿名で生徒会に伝えることの出来る、言わばアンケートの結果のようなものです。こちらに、殿下やあなたのご友人が当事者の問題が多数記されており、またそれに関して苦情が来ています」
私はティファニーから、何度もその資料を見せてもらったことがある。
殿下たちが執拗に絡んでくる。
大声が怖い。
授業中、うるさくて集中出来ない。
虐めみたいなことをされ、しばらく学校に来れなかった生徒がいる。
生徒が使う場を占拠されたり、部活動の備品を壊されたり……などなど。
生徒の8分の1近くが殿下関連の相談事を生徒会にしており、婚約者として全く役に立てていない私はただただみんなに申し訳なく思っていた。
その資料をくまなく読んだ殿下は、急にもじもじし始める。
「……いや、たったそれだけで」
「資料では8分の1ですが、相談してこない人たちも含めるとかなり迷惑している生徒が多いと、我々生徒会は缶毛ています。私は生徒会役員として、あなたに注意しに来ました――本当に金輪際辞めていただきたいんです。そのようなことは」
「……これは俺のダチが。あいつらに言ってくれよ」
「彼らには私以外の生徒会役員が直接お話しさせていただきます。それに、あなたがあの方々を止めていない時点で、同罪ですよ。わかります?」
「……」
殿下は、少しショックを受けているみたいだった。
まさか大勢の人間が自分たちの行いを嫌がっていると思っていなかったのだろう。
ティファニーにはっきり言ってもらえて本当に良かった。
私じゃ聞いてくれないことも、第三者から言ってくれることで、殿下の態度が改まるかもしれない。
「これは、私個人の意見ですが」
とうとうティファニーは、はっきりと言葉を口にした。
「正直言って、殿下を含めあの方々は、本当にダサいです」
「「えっ」」
私と殿下の言葉が重なった。
「死ぬほどダサいです。マジでダサいです。みんなの前でイキッて、
『自分たちは他の連中よりも立場が上』
だなんていう浅い虚栄心が見え透いていて、見てて恥ずかしいんです。周りが待ってく見えてなくて、空気読めなくて、周囲から嫌われていることに気づかず、
『自分が学園の支配者だ』
なんて厨二病くさいこと考えてるんだろうなー。滑稽だなーって、少なくとも私は思っています」
顔を赤くして絶句している殿下を他所に、ティファニーは続ける。
「第一王子として、という指摘は、私からはいたしません。もっと適切な人がいますしね。ただ生徒会としては、殿下たちの行動は目に余るものであり、最悪であるという認識から、直接あなたにこのことをお伝えすることにいたしました――それでは、私はこれで。生徒会で報告がありますので」
ティファニーはそう言うと、私の手をむんずと掴んで教室から出て行った。
「で、話は? 手短に言ってほしいんだけどさ」
と、殿下。
「では、手短に言わせていただきますわ」
ティファニーは言った。
「いい加減にしてくださいませ。マジで」
「は?」
「あなたは第一王子ですよね? なら、それらしい行動を取ってくださいっていう話です。学校内で友人たちと大声で騒いだり、他人にちょっかいかけたりしないでください」
「君には関係ないだろ」
「大いに関係あります。というか、生徒たちは迷惑しているんです」
「迷惑」という言葉に敏感に反応する殿下。
「生徒たちって? 何それ、主語大き過ぎねぇ? なんの根拠があってそう言うわけ?」
「私、実は生徒会役員なんです」
ティファニーは手元に持っていた資料を殿下に手渡す。
「は?」
「これは、数年前から生徒会で始めた目安箱という制度なんですが」
殿下は、なんだそれという顔をする。
「これは、学園内で起こる問題やその解決策を生徒個人が匿名で生徒会に伝えることの出来る、言わばアンケートの結果のようなものです。こちらに、殿下やあなたのご友人が当事者の問題が多数記されており、またそれに関して苦情が来ています」
私はティファニーから、何度もその資料を見せてもらったことがある。
殿下たちが執拗に絡んでくる。
大声が怖い。
授業中、うるさくて集中出来ない。
虐めみたいなことをされ、しばらく学校に来れなかった生徒がいる。
生徒が使う場を占拠されたり、部活動の備品を壊されたり……などなど。
生徒の8分の1近くが殿下関連の相談事を生徒会にしており、婚約者として全く役に立てていない私はただただみんなに申し訳なく思っていた。
その資料をくまなく読んだ殿下は、急にもじもじし始める。
「……いや、たったそれだけで」
「資料では8分の1ですが、相談してこない人たちも含めるとかなり迷惑している生徒が多いと、我々生徒会は缶毛ています。私は生徒会役員として、あなたに注意しに来ました――本当に金輪際辞めていただきたいんです。そのようなことは」
「……これは俺のダチが。あいつらに言ってくれよ」
「彼らには私以外の生徒会役員が直接お話しさせていただきます。それに、あなたがあの方々を止めていない時点で、同罪ですよ。わかります?」
「……」
殿下は、少しショックを受けているみたいだった。
まさか大勢の人間が自分たちの行いを嫌がっていると思っていなかったのだろう。
ティファニーにはっきり言ってもらえて本当に良かった。
私じゃ聞いてくれないことも、第三者から言ってくれることで、殿下の態度が改まるかもしれない。
「これは、私個人の意見ですが」
とうとうティファニーは、はっきりと言葉を口にした。
「正直言って、殿下を含めあの方々は、本当にダサいです」
「「えっ」」
私と殿下の言葉が重なった。
「死ぬほどダサいです。マジでダサいです。みんなの前でイキッて、
『自分たちは他の連中よりも立場が上』
だなんていう浅い虚栄心が見え透いていて、見てて恥ずかしいんです。周りが待ってく見えてなくて、空気読めなくて、周囲から嫌われていることに気づかず、
『自分が学園の支配者だ』
なんて厨二病くさいこと考えてるんだろうなー。滑稽だなーって、少なくとも私は思っています」
顔を赤くして絶句している殿下を他所に、ティファニーは続ける。
「第一王子として、という指摘は、私からはいたしません。もっと適切な人がいますしね。ただ生徒会としては、殿下たちの行動は目に余るものであり、最悪であるという認識から、直接あなたにこのことをお伝えすることにいたしました――それでは、私はこれで。生徒会で報告がありますので」
ティファニーはそう言うと、私の手をむんずと掴んで教室から出て行った。
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