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怒り

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 結局、セシル殿下は全く助けてくれなかった。


 助けてくれたのは、たまたま廊下を歩いてきてティファニーで、


「あー、ごめんなさいね。ちょっとこの子と話があるから」

 と、私を強引に連れ出してくれた。


 その最中、

「ティファニーちゃんだぁ」

「一緒に遊ばない?」

 と、彼女も絡まれてしまったが、

「結構です」

 という微笑みつきのキツい言葉で撃沈していた。


「ノリ悪いわぁ」

「マジでなくね?」

「つまんな」


 なんていう彼らの意地悪い捨て台詞を華麗に無視し、教室まで一緒に行ってくれたのは本当に嬉しかった。


「マジでなんなのよ」


 ティファニーは、完全に不機嫌になっていた。

「ノリ悪いって、空気読めないあの人たちに言われたくないんですけど」


「ごめんね、本当」

 私は謝る。

「ありがとう、助けてくれて」

「良いわよ、それくらい。友達なんだし」

「ありがとう」


 彼女がいなかったときのことを、私は想像出来ない。


「それにしても」

 と、ティファニー。


「あの王子、全く婚約者としての責務を果たす気はないみたいね」

「あははは……」

 
 私は苦笑した。

「あなたはきちんと妃教育を受けて努力をしているのに」

「私は好きでやってるから」


 好きな人のためなら、と思って頑張っているだけだ。


「それでも、不公平よ。というか、そもそも第一王子としてどうかと思う」


 ティファニーは、不敬やら何やらを全く気にせず続ける。


「あなたが何度言っても聞いてくれないなら、第三者である私が直接言ってみるわ。そのときはスカーレット、あなたも一緒についてきてちょうだいね」

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