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捕虜② ~ウィリアム視点~

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 早速その準備をしよう。


 まずは父上に、早く王位を譲ってもらわなければ。


 そう勢いづいて会いに行った両親から、信じられないほど非情な命令が下された。


「……は?」


 私は唖然として、目をしばたたかせる。


「お、恐れながら。もう一度、おっしゃっていただいてもよろしいでしょうか?」


「隣国から、平和条約締結の条件を3つ提示された」

 陛下は、淡々と告げる。

「1つ目は、本来公爵家のものであった領地をすべて向こう側に渡すということ。2つ目は、隣国側に下った人々を、向こうの民として受け入れさせてもらうということ。3つ目は、今回の戦犯を捕虜として隣国へ連れてくるということ」

「私たちは、そのすべての条件を飲むことにしたのです」

 母上も言った。

「それで? それで、どうして私が向こうへ行かなければならないのですか?」

「当然、3つ目の条件に当てはまるからだ。此度の戦争は、すべてお前の責任だ。そもそもお前が隣国に亡命した公爵家を脅したことで、危機感を覚えた彼らが独立を宣言したのだ」

「待ってください!」


 私は叫ぶ。

「それは元はと言えば、連中が勝手に亡命したからで。無断でそうしたことを、追求するのは王家として当然のーー」

「いい加減にしろ!」


 突然、国王は怒鳴った。


 あまりの大声に、私は身体を硬直させる。

「お前は、我が国は負けたのだ! お前のせいで。お前が無茶をするせいで、国内外の信頼はガタ落ちだ!」

「で、ですが」

「ですがもクソもあるか! せめて、誰も死ななかったのが幸いしたがな。戦争に負けたということは、そういうことだ。お前がどんな言い訳を考えていようが、どんな意味不明な理論で説得しようが、勝った国に逆らえるはずない! 自分のした尻拭いは、全部自分でしろ!」

「心配しなくても良いわよ」

 母上は、心底冷たい声で言った。

「あなたの妻とその子どもも、連れていかせてあげるからーーいつまでも、家族仲良くね」
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