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下品
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中古品。
自分の身体を使った。
胸だけ。
下品。
まるで、後頭部を鈍器で殴られたような気分だった。
頭が真っ白になる。
そんな。
そんな酷いことを。
そんな酷いふうに、彼女は私を。
私、そんなに彼女に嫌われてたの……?
ふわっと、温かい空気に包まれる。
安心する匂い。
ルークだ。
彼は私をゆっくりと抱きしめてくれた。
「王子妃殿下」
ルークの鋭い声が、テラス全体の空気を張り詰めさせる。
彼の声は酷く冷静だったが、怒気の孕んだものだった。
私はルークの胸に顔を寄せているから、彼の顔は見れない。
だけど、かなり怒っている。
それだけはわかる。
ずっと一緒に幼馴染として生きてきた私も、ここまで怒っている彼を見たことはない。
ルークの声は冷徹で、まるで肌に突き刺す吹雪のようだった。
その剣先が、真っすぐに王子妃に向けられている。
「な、何よ」
殿下は少し狼狽えていた。
「何か文句でも?」
「大いにあります」
ルークは言った。
「ですが、それは今言いません。この場では何も」
ルークの声は、怒りのあまり震えている。
「ただ、1つだけお伝えしたいことがあります――あなたのその発言は、侮辱罪に当たります」
「は?」
「侮辱罪。つまり、犯罪です」
「は? 私、王族なんだけど。私は法律で裁けないわよ」
「確かに王族です。ですが、正確には王族ではありません」
「あなたの言っている意味がわからないわ」
「そのままです。王族の血を受け継いだ王族は確かにそうですが、あなたはウィリアム殿下に嫁いだ身。つまり、あなたは離婚すればただの男爵令嬢、罰せられる対象となります。このこと、よくお考えになった方がよろしいかと思います」
「わ、私は離婚しないわ」
「それはあなたが決めることではありません。このことは、すべて王妃陛下にご連絡しますので」
それと、とルークは続ける。
「あなたは俺の婚約者を馬鹿にした。彼女を馬鹿にしたということは、すなわち我が公爵家を馬鹿にしたということです。俺は俺の家を馬鹿にした人間を許さない。これから先、我が家は王族に一切関わらず、何も協力しません」
自分の身体を使った。
胸だけ。
下品。
まるで、後頭部を鈍器で殴られたような気分だった。
頭が真っ白になる。
そんな。
そんな酷いことを。
そんな酷いふうに、彼女は私を。
私、そんなに彼女に嫌われてたの……?
ふわっと、温かい空気に包まれる。
安心する匂い。
ルークだ。
彼は私をゆっくりと抱きしめてくれた。
「王子妃殿下」
ルークの鋭い声が、テラス全体の空気を張り詰めさせる。
彼の声は酷く冷静だったが、怒気の孕んだものだった。
私はルークの胸に顔を寄せているから、彼の顔は見れない。
だけど、かなり怒っている。
それだけはわかる。
ずっと一緒に幼馴染として生きてきた私も、ここまで怒っている彼を見たことはない。
ルークの声は冷徹で、まるで肌に突き刺す吹雪のようだった。
その剣先が、真っすぐに王子妃に向けられている。
「な、何よ」
殿下は少し狼狽えていた。
「何か文句でも?」
「大いにあります」
ルークは言った。
「ですが、それは今言いません。この場では何も」
ルークの声は、怒りのあまり震えている。
「ただ、1つだけお伝えしたいことがあります――あなたのその発言は、侮辱罪に当たります」
「は?」
「侮辱罪。つまり、犯罪です」
「は? 私、王族なんだけど。私は法律で裁けないわよ」
「確かに王族です。ですが、正確には王族ではありません」
「あなたの言っている意味がわからないわ」
「そのままです。王族の血を受け継いだ王族は確かにそうですが、あなたはウィリアム殿下に嫁いだ身。つまり、あなたは離婚すればただの男爵令嬢、罰せられる対象となります。このこと、よくお考えになった方がよろしいかと思います」
「わ、私は離婚しないわ」
「それはあなたが決めることではありません。このことは、すべて王妃陛下にご連絡しますので」
それと、とルークは続ける。
「あなたは俺の婚約者を馬鹿にした。彼女を馬鹿にしたということは、すなわち我が公爵家を馬鹿にしたということです。俺は俺の家を馬鹿にした人間を許さない。これから先、我が家は王族に一切関わらず、何も協力しません」
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