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復縁

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「ーーーーーーーは?」


「殿下」


 ジェーンが、すぐさま私と殿下の手を離した。

「君は確か、ソフィアのお付きのメイドだったな」

 強引に手を外され、むっとした殿下が言う。

「使用人の君が、一国の王子に許可なく触れるとは、失礼極まりない」

「ご結婚なされている殿下が、許可なく私の主の手に触れることも、失礼極まりないと思われますが」

 ジェーンは言い返した。


「殿下」

 私は言う。

「何をおっしゃられているのですか?」

「ここまで言ってもまだわからないのか? 私と、もう一度婚約し直して欲しいのだ。そのあと、結婚しよう」

「あの」

 私は伺う。

「殿下、結婚されておりますよね……? クロエ嬢と」


 私の記憶が正しければ、卒業式が終わって直ぐに、殿下とクロエ嬢は盛大な結婚式を挙げたはずだった。


 元婚約者の私は当然行かなかったので、実際どんな式だったのかは知らないが、2人の結婚式並びに披露宴は、それはそれは派手なものだったと言う。


「そんな金があるなら、俺たちの生活の補助に回せ」


 と、市民たちから非難の声が上がるくらいには。


「チッ」


 殿下は舌打ちをした。

「今、そんなことはどうだって良いだろう。問題なのは、君の気持ちだ」

「い、いえ。とても重要な問題だと思います」


 結婚している人間に告白をされても、私としては困惑するばかりだ。


「クロエに騙されたんだ」

 殿下は言った。

「は?」

「彼女は、私を愛してなどいなかった。私の『王子』としての称号が好きだったのだ」

「は、はあ……」
 

 それがどうしたのかという言葉は、辛うじて飲み込んだ。


「あの女は、私と結婚したその日に、自分の親族の地位を上げてくれと懇願してきた。あの女が私を誑かしたのは、全て自分たちの利益のためだったんだ。愛じゃなかった」


 私は、殿下の演説を呆然と聞いていた。


「……それで、なぜ私の話が?」

「気づいたんだ。君が、どれほど私を想っていてくれたか」


 殿下は、また私の手を取ろうとする。


 今度は素早く両腕を身体の後ろに隠し、事なきを得た。


 殿下の手が宙を舞い、所在なさげな様子でふらふらしている。


「君がどれだけ私のことを愛していてくれていたか、十分に思い知った。私は反省したんだーーだから、ソフィア。私ともう一度やり直してくれ。ルークと婚約破棄をして、もう一度私の愛を受け取ってくれ」


 私は殿下の愛の告白を聞き、深呼吸して返事をした。


「殿下、私たちはもう終わったんです」
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