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告白

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  私は驚いた気持ちを表に出さないように努めながら返事をした。

「そ、そうだったの……」

「ああ」

  しばし、沈黙が流れる。


  私は少し悲しくなった。


  彼とは長い付き合いだ。

  なのに、私は彼が失恋していたことにこれっぽっちも気づいていなかったのだ。


「その子は、」

  ルークが話し始める。

「俺が告白をする前に、許嫁が出来てしまった」

「そ、そうなんだ……」

「もちろん、俺が悪いんだ。俺が先に告白しておけば、彼女はそっちに行かなかったのかもしれない。相手を好きにならなかったのかもしれない」

  ルークは真剣な眼差しで、一つ一つ力強く言葉を重ねていった。


  本気なのだ。

  今も、彼女のことが好きなのだ。


「それで、その子は今どうしてるの?」

「その子は今、不幸な目にあっている」

「不幸?」

  ルークは目を伏せる。

「ああ。とてつもない不幸だ。彼女は今ものすごく傷ついていると思う」


  だから、力になりたいんだ。


  ルークは、私の目を見つめながら言った。

「良いと思うわ」

  私はなんと返せばいいかわからず、当たり障りないことでしか、彼への言葉は紡げなかった。

「凄く良いと思う。大変なその子のことを、ちゃんと支えてあげるのよ。婚約者なんて関係ないわ」
 

  いいなあ。

  眩しいなあ。


  私はふと泣きたくなる。


  私もルークがその子をずっと好きなように、殿下にそう想われたかった。

  私のことを、ずっと好きでいてほしかった。


  でも、時は戻らないのだ。

  彼は私から離れ、愛らしいクロエ嬢のところへ行ってしまった。

  殿下のことを愛していた私を置き去りにしてーー。


  また後ろ向きなことを考えてしまい、慌ててそれを払拭するために私は話を続ける。

「それで、その子って私の知っている人?」

「……うん」

「そっか、誰なのかしら」

「ソフィア、君が一番良く知っている人だ」

「私が?」

  私は自分の交友関係をリストアップする。


  でも、彼と彼女たちが私抜きで会話しているのを見たことがなかった。

「私の友だち?」

「違う」

「じゃあ、私の親戚かしら?」

  ルークは首を横に振る。

「違う」

「じゃあ、誰? 降参するわ。全然思いつかない」

「……」

「ルーク?」

  ルークは何も言わず、じっと私の顔を見つめている。

「ルーク?」

「ソフィア……」


  まさか。


  反射的に立ち上がろうとした私の手を、ルークは強く握り締めた。

「逃げるな」

  ルークの声はいつも以上に低く、私は身体を硬直させる。

「逃げるな、頼むから」

  彼の声は、悲痛に彩られていた。

  私はもう一度座り直す。


「ルーク」
  
「俺が好きなのは、君だ。ソフィア、ずっと前から。君がウィリアム王子と出会う前から。俺は君だけをずっと見てきたんだ」
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