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第1章

突然

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 それは、本当に突然のことだった。


 私がいつものように朝仕事をしてから学校へ行くと、教室に、


「ヤバい! ヤバいって!」

 と、男子生徒がはしゃぎながら飛び込んできた。

「何よ」

「うるさいんだけど、朝から」


 女子生徒たちに邪険にされても、彼はまったく気にも留めなかった。


 それどころか、

「村に今貴族が来てるんだって!」

 と、さらに騒ぐ。


「貴族?」

「何それ」

「冗談でしょ?」


 と、誰も取り合おうとはしない。


 だけど。


 私はサーッと、血の気が引いていくのを感じた。


 いや、まさか。

 そんなはずは――。


「なあ、エミリー」

 私の表情の変化に気づいた男子は、私に絡んできた。

「えっ」

「お前は、俺のこと信じてくれるよな?」

「はあ」


「ちょっと。エミリーが可哀想でしょ」

「俺は可哀想だとは思わないわけ? なあ、エミリー」


 ……とりあえず、私を挟んで喧嘩しないでほしい。


「その貴族って?」

 私は、バクバクと怯える心臓に気づかないふりをして尋ねた。

「なんでここに?」


「さあ」

 男子は首を傾げた。

「知らねぇ。ただ、村長が慌ててそいつを家に連れて行ってたけど」


「へえ」


 どうやら、彼から情報は聞き出せないみたいだ。


「でも、本当に貴族かどうかはさておき」

 友人の1人が言った。

「私たちには関係ないことでしょ」

「まあ、そりゃそうだな」

 彼女にそう言われて、スッと平静に戻る男子。


「多分、村関係の仕事で来てんだろうな」


 それなら良いんだけど。

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