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真意

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 夫妻が立ち去ったあと、私はライナーに質問する。


「それで、この指輪には一体なんの意味があるの?」


 自分でつけてこいと言ったのにも関わらず、ライナーはどぎまぎしていた。


 いつもは飄々として、何事に対しても余裕な雰囲気を放っていたけれど。

 今は少し――と言っても、ほんの少しだけだが、動揺しているように見える。


 彼がそんな態度を取る理由がわからない私は、小首を傾げた。


「どうしたの? ライナー。なんか変よ。いつも以上に」

「うん? ……いや。なんでもない。それより、その指輪のことだね」


 彼はそう言って、金メッキの指輪に軽く触れる。


 その手は、壊れ物に触れるかのような丁寧な手つきで。

 それを見つめる慈愛に満ちた彼の表情に、私は少しドキッとした。


「……やっぱり」

 ライナーは言った。

「覚えてないんだね」

「……何を?」

「僕たちが、初めて会ったときのことだ」


 私は少し不安になる。


 ライナーとの初対面は、執事のオズワルドによる紹介のはずだ。


 私がイヴァンとジェシーの関係やマウントに悩まされていたころ、

「気分転換に、ほかの男性と遊びに行くのはどうでしょうか?」

 と言ったオズワルドの提案に、私が乗ったのだ。


 しかし、どうやら話はそこじゃないらしい。

 ライナーが言いたいのは、「初めて会ったとき」というのは、それじゃない。


 もっと、昔の話なのだろう。


「ごめんなさい」


 だけど、全く思い出せない。

 時間が経てば記憶を取り戻せるのかもしれないけど。


 全く覚えていない。


 知ったかぶりをする路線も考えたが、ライナーの発言的に、私たちの関係に置いて結構重要なエピソードだったらしい。

 そうして余計に話が拗れてもアレなので、私は素直に謝罪した。


「全く覚えてないわ――オズワルドに紹介されたときじゃないってことだけはわかったけど」

 

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