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平穏

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 第一王子夫妻の結婚3周年記念パーティは、つづかなく進行していた。


 私に最近起こった数々の事件を振り返ると、本当にあっけないほどに。


 第一王子の妻は、イヴァンの姉。

 要するに、イヴァンの家族は王子妃の、未来の王妃の実家だったというわけである。


 私は彼女の実家から喧嘩を思いっきり買った。

 真正面からやり合い、彼女の実家を破滅寸前まで追いやってしまった。


 ほとんど自爆みたいなものだけど。


 私と王子妃殿下は昔から仲が良く、彼女には色々と良くしてもらっていた。


 私と殿下の仲は、イヴァンの実家と揉めようが変わらないけど。

 周りから見れば、そうもいかない。


 私と王子妃殿下は仲が悪いか、それとも気まずい関係かのどちらかにしか見えていないだろう。


 だからか、2人はパーティ開催中、早めに私たちに声をかけてくれた。


「今日は来てくれてありがとう、2人とも」

 ジョシュア殿下は、にっこりと微笑んでくれた。

「いえ。お2人の結婚3周年をお祝い出来て、とても光栄ですわ」


 私はドレスの裾を持ち、丁寧にお辞儀をする。

「お祝いの品は、また後日お渡しいたします」


「そんな、良いのに。気を遣わなくても」

 と、ヘレナ王子妃殿下。


 彼女はまだ少し顔色が悪いようだったが、心配するほど精神が不安定だというわけではないらしい。

 実家の事件で参っていると聞いていたが。


 そのときよりは確実に、前に進んでいる様子。


 私は内心ホッとする。


 良かった。

 大丈夫そうだ。


「ああ。ごめん」

 ライナーは、茶目っ気にヘラッと笑う。

「プレゼント用意するの忘れてしまったよ。せっかく美しい従姉に、僕のことを好きになってもらおうと思ってたのに」


「もう」

 ヘレナ様はくすくすと笑う。

「相変わらず冗談が好きですね、あなたは」


「本当だよ」

 呆れた表情のジョシュア殿下。

「彼女は私の妻だ。お前には渡さんぞ」


 私は眩しく思う。


 2人は、本当に仲睦まじい。

 お互いを想い合い、支え合う。


 まさに、理想の夫婦。


「あら」

 ふと、王子妃殿下の視線が、私の胸元に向かう。

「不思議なネックレスだと思ったら、指輪なのね」

「ああ……」


 そう言えば、色々あって忘れていたけど。

 オズワルドに渡された指輪を、首にかけていた。


 金メッキの指輪。

 おもちゃだ。


「確かに」


 ジョシュア殿下も、覗き込むようにして指輪を見つめる。

「可愛らしい指輪だな。誰かのプレゼントかい?」

「ライナーから、今日はつけてくるようにと」

「へえ。そうなのか?」

「ああ、うん……」


 いつも飄々とした雰囲気のライナーが、なぜか今はしどろもどろになっていた。


「ふうん」


 何かを察したのか、ニヤニヤと殿下が笑う。

「お前も案外、一途だな」

 
 
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