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会場

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 差し出されたライナーの手を取り、私たちはパーティの会場である大広間へと向かう。


 会場には、既に参加者たちが集まっていた。

 私たちが足を踏み入れると、そのうちの何人かが振り返る。


 ライナーを見て色めき立つ令嬢たちもいれば、その隣にいる私を見て驚く者たちもいた。


 そんな視線に慣れているのか、ライナーはいつも通りのリラックスとした表情で、

「今日は君とパーティに参加出来て良かったよ」

 と、私に向かって言った。

「私もよ」


 先ほどのあの件で、少し私はむしゃくしゃしていた。

 だけど私は、その苛立ちをライナーにぶつけるなんていう令嬢らしからぬ行いをするつもりはない。


 目一杯微笑んでみせる。

「今日はありがとう」

「いえ」

 ライナーもにっこりと笑った。

「こちらこそ」


 パーティは、まだ始まっていないようだ。

 本日の主役であるジョシュア殿下とその妻は、まだ現れていない。


 時計を見ると、開始までまだもう少し時間があるみたいだった。


 私たちは開いているテーブルに移動し、腰かける。

 手持無沙汰になったので、私はライナーに話を振った。


「そう言えば、ここに来る前は何してたの?」


 本来パーティに参加する男女は、一緒の馬車で向かわなければならない。

 それがマナーだ。


 だけど、ライナーは城に用事があるからと、私たちは別々のタイミングで城に訪れることになった。


 だからこそ、あんな目に遭ったんだけど。


「ああ」

 ライナーは答えた。

「ちょっと陛下に用があって」

「陛下に?」

「そうなんだ。ちょっとね」


 ライナーは珍しく口ごもっている。


「へぇ」


 詳しいことは、あまり言いたくないらしい。

 言いたくないのならと、こちらも深く尋ねることはしなかった。
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