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ようやく
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ライナーの独壇場が終わったところで、警備員さんがようやく警察を連れてきたようだ、外からけたたましいサイレンとともに、館内を走る音が聞こえた。
「やっべ」
「どうしよう、ねえ、本当に来ちゃったんだけど」
イヴァンとジェシーは、青白い顔で互いを見合わせる。
まさか、本当に連れてくるとは思っていなかったらしい。
「だ、大丈夫だろ――俺たちは貴族だからな」
「え、ええ。警察が私たちを逮捕出来るはずないわ」
もちろん貴族は警察が取り締まることは出来ないけれど。
だからと言って、市井で警察を呼ばれたという事実は、変わらない。
それが社交界にバレてしまえば、貴族としての矜持というか、プライドがズタズタになる。
もう、この2人とその家族は顔を出して外を歩けなくなるかもしれないというのに。
これからさらに自分たちが大恥をかくかもしれないということを、イヴァンとジェシーはわかっていないのだろうか。
「みなさん、こっちです!」
先ほどの警備員さんの声が聞こえる。
イヴァンは舌打ちをし、ライナーを指差す。
「どうせお前、下位貴族だろ。上位貴族である俺たちに文句を言いやがって。自分が天下取ったと思ったら大間違いだぞ」
いや、もともと下級貴族だったのはあんたの家でしょ。
「そうよ! それにグレース。あなた最低ね! 幼馴染の私たちを裏切って、そんな安っぽい男を従えてるのね。本当、公爵令嬢が落ちぶれたものだわ」
落ちぶれたのはあんたたちよ。
だが、もはやいちいちツッコむ気力はなく、私は嘆息してライナーに言う。
「ごめんなさい、ライナー。こんなことに巻き込んじゃって」
「君が謝ることじゃないよ」
ライナーは首を振った。
「悪いのは君じゃなくて、そこの2人だ」
足音がだんだん近づいていき、先ほどの警備員が部屋に現れる。
「すみません、お待たせしました!」
息も絶え絶えの警備員。
大丈夫だろうか。
というか、警察呼ぶだけでなんてそんなに疲れているんだろう?
私の疑問は、次の瞬間、解決する。
その瞬間、私は目を見張った。
「失礼します」
そう言ってぞろぞろと入ってきたのは、警察官ではなく、国王直属の兵士団――近衛兵たちだったからだ。
「やっべ」
「どうしよう、ねえ、本当に来ちゃったんだけど」
イヴァンとジェシーは、青白い顔で互いを見合わせる。
まさか、本当に連れてくるとは思っていなかったらしい。
「だ、大丈夫だろ――俺たちは貴族だからな」
「え、ええ。警察が私たちを逮捕出来るはずないわ」
もちろん貴族は警察が取り締まることは出来ないけれど。
だからと言って、市井で警察を呼ばれたという事実は、変わらない。
それが社交界にバレてしまえば、貴族としての矜持というか、プライドがズタズタになる。
もう、この2人とその家族は顔を出して外を歩けなくなるかもしれないというのに。
これからさらに自分たちが大恥をかくかもしれないということを、イヴァンとジェシーはわかっていないのだろうか。
「みなさん、こっちです!」
先ほどの警備員さんの声が聞こえる。
イヴァンは舌打ちをし、ライナーを指差す。
「どうせお前、下位貴族だろ。上位貴族である俺たちに文句を言いやがって。自分が天下取ったと思ったら大間違いだぞ」
いや、もともと下級貴族だったのはあんたの家でしょ。
「そうよ! それにグレース。あなた最低ね! 幼馴染の私たちを裏切って、そんな安っぽい男を従えてるのね。本当、公爵令嬢が落ちぶれたものだわ」
落ちぶれたのはあんたたちよ。
だが、もはやいちいちツッコむ気力はなく、私は嘆息してライナーに言う。
「ごめんなさい、ライナー。こんなことに巻き込んじゃって」
「君が謝ることじゃないよ」
ライナーは首を振った。
「悪いのは君じゃなくて、そこの2人だ」
足音がだんだん近づいていき、先ほどの警備員が部屋に現れる。
「すみません、お待たせしました!」
息も絶え絶えの警備員。
大丈夫だろうか。
というか、警察呼ぶだけでなんてそんなに疲れているんだろう?
私の疑問は、次の瞬間、解決する。
その瞬間、私は目を見張った。
「失礼します」
そう言ってぞろぞろと入ってきたのは、警察官ではなく、国王直属の兵士団――近衛兵たちだったからだ。
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