婚約者の幼馴染からの仲良しマウントが酷いので、お望み通り別れることにしました

独壇場

　自分の親から話を聞いていないのだろうか。

　ライナーを指差し、イヴァンは言う。

「こんなどこの馬の骨かもわからない男に、俺たちのプライバシーを全部喋ったのか！　お前、最低だな」


　どこの馬の骨かもわからないって……。

　この人、王族なんですけど。


　しかしどうやら、この2人も自分の両親と同様、ライナーが国王陛下の甥であることを知らないらしい。


　が、ライナーはそのことについてご丁寧に説明するつもりはないようだった。


「国王陛下が内密にだって？　……陛下がそんなふうに配慮しても、失礼だけど口留めは難しいんじゃないかな。君たち並びにその御両親の行動は、いささか度が過ぎているよ。王族と国のNO.２である宰相一家に喧嘩を売ったんだから。君たちの普段の様子は学園にも知れ渡っているし、そもそも国王裁判の件だって内外に向けて公表したことのはずだ。その結果が知れ渡るのは、至極当然のことだ――もうすでに、その話は貴族みんな知ってる。……ああ。もちろん、グレースが言い触らしたわけじゃないよ」


　ライナーはなおも続ける。

「話を戻すと――君たちのその行動は、貴族として以前に、まず人としておかしい。自分たちが失礼を働いた人に助けを乞うなんて、どうかと思うよ」

「「……」」


　2人はぐうの音も出ないみたいだった。


　黙り込んだまま、お互いの顔を見合わせる。

　苦虫を噛み潰したような表情。


「自分に都合が悪くなったら、今度はだんまりかい？」


　ライナーは肩をすくめる。


「まあ、君たちの精神が子どもで責任もちゃんと持てないような愚かな人間だというのは、この際どうでも良い――問題なのは、終わったことをわざわざ蒸し返してグレースを批判しようとすることと、なんの関係もない陛下やほかの人に迷惑をかけようとしていることだ。はっきり言って、君たちの行動は最低だよ。それを公然の場で指摘されても反省すらしないのであれば、もう法的機関にお願いするしかないね」