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帰り

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 私とお父様が屋敷に戻ろうと長い城の廊下を歩いていると、


「グレース!」

 と、声をかけられた。


 振り返ると、走ってきたらしい、少し息の上がった姿のライナーがそこにいた。

「あら、ライナー。どうしたの?」


 陛下との謁見があるとか言ってた気がするけど。


「少し陛下に時間をいただいたんだ――今、時間ある? 話したいことがあって」


 私とライナーはお父様の方を見た。

 父は、少し動揺した様子で目を泳がせながら、

「わ、私のことは気にするな……。馬車の方で待っている。話が終われば来るがいい」

 と言った。


「すみません、宰相殿」

 ライナーは胸に手を当ててお父様に頭を下げる。

「彼女のお時間を少々いただきます。急ぐ身ですので、挨拶は省かせていただきます」

「あ、ああ……」


 お父様は足早にその場を立ち去った。


 お父様が見えなくなってから、私はライナーに話しかける。

「それで、話って?」

「ちょっとね。ここじゃなんだから、空いている部屋に行こう」



 私はライナーに連れられて、離れの塔へ向かった。

「ここはね、グレース」

 ライナーが言う。

「僕が陛下からいただいた部屋があるんだ」

「陛下から?」

「ああ。僕は陛下の甥でもあるけど、なぜか結構陛下に好かれているみたいでね。おかげさまで、城の中で好きに使って良いと言われた部屋があるんだ」

「へぇ」


 石が積み上がった古い階段を何段も上り、最上階についた。


「ここだ。入ってくれ」

 ライナーが指さしたのは、古風な扉だった。


「ここでお茶でもしようか。今日は裁判で疲れただろうしね」

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