33 / 70
結論
しおりを挟む
「国王陛下! 彼女の言葉はすべてまやかしです。彼女は嘘をついています」
イヴァンの父親は喚く。
だが、
「お前の話はもう聞き飽きた」
と言って、陛下は取り合わない。
「なぜですか!? 今は裁判でしょう!?」
「確かに裁判だ。しかし、まともな証拠も発言もしないお前の話は、全く信用に値しない」
「し、しかし」
「なんだ? ちゃんと説明出来るのか? 具体的に、どこかどうなっているのか、ちゃんと説明出来るのか!?」
陛下に詰め寄られ、彼はうっと黙り込む。
「ほら、早く話せ!」
「うっ、ぐっ……」
イヴァンの父親は、苦虫を嚙み潰したような表情で呻くばかりだ。
「……仕方がない」
陛下は嘆息した。
「彼はもう言いたいことはないらしい。お前たちはどうだ」
「私たちは先ほどすべてお伝えしましたので」
私は答える。
「うむ。では、判決を言い渡す」
国王陛下は言った。
「本来であれば、今回の裁判内容を後日精査してから厳正な判決を行うが、今回のはあまりにも酷過ぎる。最悪だ。裁判ではない」
そう、裁判ではない。
裁判と言うには、あまりにも稚拙過ぎた。
嘘を重ねる原告と、それを全部真っ向から否定する被告。
陛下が介入するまでもない話し合いだった。
「判決を言い渡す。原告の請求は却下だ」
「へ、陛下!」
「うるさい。それと、こんな無駄なことをさせたお前の処分はあとで伝える。お前は今すぐ出ていけ!」
「ひっ」
陛下の怒号に気圧され、イヴァンの父親は小さく悲鳴をあげる。
が、部屋から出ていこうとはしない。
「何をしている! 早く出ていけ!」
「へ、陛下。この女は浮気しています!」
「もう終わったことだ。まだお前は私の時間を無駄にする気か!」
「ち、違います! こ、これを、これを見てください!」
イヴァンの父親は、1枚の写真を投げる。
「ほら、これを見てください!」
「なんだ?」
「この女は、イヴァンと違う別の男と2人でデートをしています。2人でご飯を食べに行っています。この女も結局、我々と変わりません」
もう、自分の息子が浮気をしたことを完全に認めてしまっていた。
というか、やっぱりあの2回目のデートのとき、この人たちもついてきていたのか。
「うむ」
陛下は顎に手を当てる。
「ライナーではないか」
「ご存じですか?」
「何を言う」
国王陛下は、信じられないものをみるような目でイヴァンの父親を見つめる。
「ライナーは私の甥だ。お前の娘が嫁いだ第一王子の従兄弟だぞ」
イヴァンの父親は喚く。
だが、
「お前の話はもう聞き飽きた」
と言って、陛下は取り合わない。
「なぜですか!? 今は裁判でしょう!?」
「確かに裁判だ。しかし、まともな証拠も発言もしないお前の話は、全く信用に値しない」
「し、しかし」
「なんだ? ちゃんと説明出来るのか? 具体的に、どこかどうなっているのか、ちゃんと説明出来るのか!?」
陛下に詰め寄られ、彼はうっと黙り込む。
「ほら、早く話せ!」
「うっ、ぐっ……」
イヴァンの父親は、苦虫を嚙み潰したような表情で呻くばかりだ。
「……仕方がない」
陛下は嘆息した。
「彼はもう言いたいことはないらしい。お前たちはどうだ」
「私たちは先ほどすべてお伝えしましたので」
私は答える。
「うむ。では、判決を言い渡す」
国王陛下は言った。
「本来であれば、今回の裁判内容を後日精査してから厳正な判決を行うが、今回のはあまりにも酷過ぎる。最悪だ。裁判ではない」
そう、裁判ではない。
裁判と言うには、あまりにも稚拙過ぎた。
嘘を重ねる原告と、それを全部真っ向から否定する被告。
陛下が介入するまでもない話し合いだった。
「判決を言い渡す。原告の請求は却下だ」
「へ、陛下!」
「うるさい。それと、こんな無駄なことをさせたお前の処分はあとで伝える。お前は今すぐ出ていけ!」
「ひっ」
陛下の怒号に気圧され、イヴァンの父親は小さく悲鳴をあげる。
が、部屋から出ていこうとはしない。
「何をしている! 早く出ていけ!」
「へ、陛下。この女は浮気しています!」
「もう終わったことだ。まだお前は私の時間を無駄にする気か!」
「ち、違います! こ、これを、これを見てください!」
イヴァンの父親は、1枚の写真を投げる。
「ほら、これを見てください!」
「なんだ?」
「この女は、イヴァンと違う別の男と2人でデートをしています。2人でご飯を食べに行っています。この女も結局、我々と変わりません」
もう、自分の息子が浮気をしたことを完全に認めてしまっていた。
というか、やっぱりあの2回目のデートのとき、この人たちもついてきていたのか。
「うむ」
陛下は顎に手を当てる。
「ライナーではないか」
「ご存じですか?」
「何を言う」
国王陛下は、信じられないものをみるような目でイヴァンの父親を見つめる。
「ライナーは私の甥だ。お前の娘が嫁いだ第一王子の従兄弟だぞ」
14
お気に入りに追加
5,347
あなたにおすすめの小説
自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした
影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。
若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。
そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。
……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
(完)なにも死ぬことないでしょう?
青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。
悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。
若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。
『亭主、元気で留守がいい』ということを。
だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。
ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。
昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる