上 下
29 / 70

反撃①

しおりを挟む
「まず、こちらをご覧ください」


 私は山のように積み上がった写真の中から、100枚単位でまとめた1つの束を写真を陛下に見せた。

「これがイヴァンとジェシーが付き合っている証拠になります」

「う、嘘だ……!」

 イヴァンの父親は叫んだ。

「陛下、騙されないでください! この2人は嘘をついています!」

「却下だ」

 国王陛下はすげなく返した。

「まだ証拠を見ておらん。それと、お前は今発言権を与えられていない。お前が反論出来るのは、この証拠を全て見終わってからだ」

「す、すみません……」


 自分が一気に不利になったのを感じたのか、焦った彼は暴挙に出てしまった。


 この国王裁判で、いや元々の行動もあるかもしれないが、この男の国王陛下からの評判は地に落ちている。


「さて、グレース」

 国王は私に声をかける。

「続けてくれ」

「はいーー先程も申し上げた通り、これが証拠になります」


 ライナーと2人で集めたものだ。

「ふむ」

 国王陛下はその写真をペラペラとめくる。


 そこには、イヴァンとジェシーが手を繋いで町を歩く姿や、抱き合ったり肩を寄せ合ったりしている姿が収められている。

「確かに、手を繋いで歩いているな」

「抱き合ってもいますよ」

「そのようにしか見えぬ」

「う、嘘ですよ、陛下! 私の息子がそんなことをするはずが」

「黙れと言っているだろ、さっきから。お前には発言権がない!」


 国王陛下は一喝した。

 陛下の怒鳴り声に驚いたイヴァンの父親は硬直した。


「日付をご覧ください」

 私は続ける。

「こちらはすべて、学園の生徒たちが有志で提供してくれた証拠です。写真部の生徒が提示してくれたものには、端に日付がついています」

「これは、私の娘とイヴァンがまだ婚約している期間に取られているものですよ」


 お父様が、私の言葉を補完してくれた。

「イ、イヴァンの話では、グレースから許可をもらっていたはずだが」

「だから、黙れと言っておろう!」


 国王陛下はさらに叫んだ。

「ひっ」


 イヴァンの父親は悲鳴をあげ、身体を縮こませる。

「許可は与えていません。私は彼らが2人きりで会っているということを、後日ジェシーにに聞かせられることがほとんどでした」
 

 私はリアカーから、1つのボイスレコーダーを取り出す。

「こちらをお聞きください」


 私はそのボタンを押した。


 ピッ。

『は? ーー今なんて?』

『だからぁ』

 ジェシーの声だ。

『昨日、イヴァンと遊園地に行ったのよ。そのときにイヴァンってばね』

『ちょっと待って。イヴァンは私の婚約者よね?』

『ええ、そうよ』

『なのにどうして、私の約束を破ってイヴァンはあなたと遊びに行ってるの?』

『えっ、そうなの!? ごめんなさぁい。イヴァンってば、婚約者のグレースになんて酷いことするのかしら! 私がイヴァンの代わりに、謝っておくわねぇ』


 ピッ。

「こんなふうな話を、よくされました」


 私は出来るだけ怒りを抑え、淡々と話す。


 出来るだけ証拠を残して置いてよかった。

 まさか逆に訴えられるとは思っていなかったけれど、何かあったときのために、イヴァンとジェシーとの会話を全部録音していたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

それは報われない恋のはずだった

ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう? 私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。 それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。 忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。 「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」 主人公 カミラ・フォーテール 異母妹 リリア・フォーテール

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

処理中です...