23 / 70
待機
しおりを挟む
「それにしても」
国王陛下はおっしゃった。
「これは世間話だがーーどうして、訴えられると言う事態にになったんだ? お前たち家族は仲が良かったはずだろう?」
「これは裁判の内容の話になってくるのですが」
と、お父様。
「ざっくりとお話いたしますと、どうやらグレースの婚約者であったイヴァンが、グレースに隠れてジェシーと付き合っていたようで」
「なるほど……。それは2人の両親からは聞いていない話だ」
国王は少し目を丸くした。
私は驚く。
なんとあの家族、自分の不利になるような事実を、陛下に伝えていないらしい。
「ちなみに、向こうはこの件をなんと?」
お父様は陛下に尋ねる。
「詳しい話は聞いていない。だが、お前の娘が嘘をつき、自分たちの子どもを孤立させた。名誉棄損だと訴えているのだ」
国王は深く嘆息した。
「その、お聞きしたいことがあるのですが」
私は前々から気になっていたことを質問する。
「なんだ?」
「どうして、今回の裁判を行うことにしたのですか? 正直言って、この問題は陛下がわざわざ仲介しなければならないような揉め事ではないと思っております。陛下には公務がございますし、優先順位で言えば、かなり低い問題だとは思いますが」
「そうだな。グレースの言う通りだ」
国王陛下は頷く。
「なら、どうして」
「端的に言うと、うるさかったのだ」
心底嫌そうな顔で、陛下はおっしゃった。
「どうしても国王裁判をやってほしいとあやつらに言われてな。本当なら蹴ってしまっても良かったのだが。ただ、今回訴えられたのは我が国の宰相であるお前の父親だ。受け入れないわけにはいかなかった」
なるほど。
国のNo.2である宰相を訴えるということは、すなわち国に喧嘩を売るということだ。
向こうがそれくらいの覚悟をもってして裁判を起こそうというのだから、こちらもきちんと対応しなければならない。
――そう陛下は言いたいのだろう。
「そう言えば」
お父様は時計を見ながら言った。
「まだ来ないようですね」
「そうだな」
国王陛下も、掛け時計のある方角を見つめる。
「もうそろそろ裁判の予定時刻なのだが」
今回の原告である、イヴァンとジェシーの両親がまだ来ないのだ。
私は怖くなってきた。
自分たちから国王陛下を引っ張り出してきておいて、もしかして遅刻するつもりなのか?
それがどれだけ国王陛下に対する不敬なのか、自覚しているのだろうか。
「もし、来なかったらどうしますか?」
私は陛下に問う。
「そうだな」
彼は片手で自分の顎を撫でた。
「このまま行くと、不敬罪だな。牢屋行きだ」
国王陛下はおっしゃった。
「これは世間話だがーーどうして、訴えられると言う事態にになったんだ? お前たち家族は仲が良かったはずだろう?」
「これは裁判の内容の話になってくるのですが」
と、お父様。
「ざっくりとお話いたしますと、どうやらグレースの婚約者であったイヴァンが、グレースに隠れてジェシーと付き合っていたようで」
「なるほど……。それは2人の両親からは聞いていない話だ」
国王は少し目を丸くした。
私は驚く。
なんとあの家族、自分の不利になるような事実を、陛下に伝えていないらしい。
「ちなみに、向こうはこの件をなんと?」
お父様は陛下に尋ねる。
「詳しい話は聞いていない。だが、お前の娘が嘘をつき、自分たちの子どもを孤立させた。名誉棄損だと訴えているのだ」
国王は深く嘆息した。
「その、お聞きしたいことがあるのですが」
私は前々から気になっていたことを質問する。
「なんだ?」
「どうして、今回の裁判を行うことにしたのですか? 正直言って、この問題は陛下がわざわざ仲介しなければならないような揉め事ではないと思っております。陛下には公務がございますし、優先順位で言えば、かなり低い問題だとは思いますが」
「そうだな。グレースの言う通りだ」
国王陛下は頷く。
「なら、どうして」
「端的に言うと、うるさかったのだ」
心底嫌そうな顔で、陛下はおっしゃった。
「どうしても国王裁判をやってほしいとあやつらに言われてな。本当なら蹴ってしまっても良かったのだが。ただ、今回訴えられたのは我が国の宰相であるお前の父親だ。受け入れないわけにはいかなかった」
なるほど。
国のNo.2である宰相を訴えるということは、すなわち国に喧嘩を売るということだ。
向こうがそれくらいの覚悟をもってして裁判を起こそうというのだから、こちらもきちんと対応しなければならない。
――そう陛下は言いたいのだろう。
「そう言えば」
お父様は時計を見ながら言った。
「まだ来ないようですね」
「そうだな」
国王陛下も、掛け時計のある方角を見つめる。
「もうそろそろ裁判の予定時刻なのだが」
今回の原告である、イヴァンとジェシーの両親がまだ来ないのだ。
私は怖くなってきた。
自分たちから国王陛下を引っ張り出してきておいて、もしかして遅刻するつもりなのか?
それがどれだけ国王陛下に対する不敬なのか、自覚しているのだろうか。
「もし、来なかったらどうしますか?」
私は陛下に問う。
「そうだな」
彼は片手で自分の顎を撫でた。
「このまま行くと、不敬罪だな。牢屋行きだ」
14
お気に入りに追加
5,339
あなたにおすすめの小説
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる