13 / 70
訴訟
しおりを挟む
「訴訟を起こすそうだ」
ライナーと一緒に帰ったその日、私はお父様に呼び出された。
「訴訟、ですか?」
「ああ。自分たちの息子と娘が付き合っているという、あられもない噂を立て、名誉を著しく傷つけたとして、な。これがその手紙だ」
「はあ」
私はお父様から手紙を受け取る。
イヴァンとジェシーの両親から、訴訟を起こすという旨の書簡が届いていた。
「まさか、こんなことになるとは……。あいつら、気でも狂ったのか」
お父様は、頭を抱えている。
随分と疲れているようだった。
無理もない。
親友だと思っていた人々の子どもたちが自分の子どもを裏切り、あまつさえその両親は自分たちの子どもに肩入れしようとしているのだ。
「すみません、お父様」
私は謝罪した。
「いや、お前は何も気にしなくて良い。悪いのはお前ではないからな。それより、訴訟を起こされたとなると、お前も法廷に立たないといけなくなる。それは大丈夫か?」
「ええ。大丈夫です」
私は手紙をパラパラとめくり、はたと気づいた。
「これって、もしかして国王裁判ですか?」
「ああ……。どうやら、私たちのいざこざに、国王陛下まで巻き込もうとしているようだ」
国王裁判とは、文字通り貴族たちの揉め事を国王自らが裁く審判のことだ。
「こんな男女の揉め事に、国王陛下を?」
「ああ。あいつら、よっぽど自分たちの子どもが可愛いんだろうな」
お父様は嘆息した。
「それで、だ。グレース、他に証拠などはあるか?」
「証拠ですか?」
「ああ。もちろんあの音声だけでも、かなりの力がある。しかし、念には念を入れよう。私たちが勝つために、もっと証拠を集めなければならない」
「そうですねぇ」
私は考え込んだ。
「日記も、証拠にはなるんですよね?」
「ああ」
「私、ずっとつけてた日記があります。あとは、何人かジェシーの被害にあっていたり、彼らが2人きりでいる様子を目撃した生徒たちもいるはずです」
「なるほど。では、彼らに証人として出てもらえるかどうか、頼んできてくれないか?」
「承知しました」
私は頭を下げ、部屋から出て行こうとする。
「ちょっと待て」
お父様は、背中越しに声をかけてきた。
「はい」
お父様は咳払いして言った。
「……最近、仲の良い男友達がいると、オズワルドから聞いたぞ」
「ああ。ライナーのことですか?」
「今回の件について、大変世話になっているようだな。彼に、私がよろしくと言っていたと伝えてくれ」
「あっ、はい」
さっきの頼もしさはどこへやら。
お父様は、至極気まずそうにしていた。
ライナーと一緒に帰ったその日、私はお父様に呼び出された。
「訴訟、ですか?」
「ああ。自分たちの息子と娘が付き合っているという、あられもない噂を立て、名誉を著しく傷つけたとして、な。これがその手紙だ」
「はあ」
私はお父様から手紙を受け取る。
イヴァンとジェシーの両親から、訴訟を起こすという旨の書簡が届いていた。
「まさか、こんなことになるとは……。あいつら、気でも狂ったのか」
お父様は、頭を抱えている。
随分と疲れているようだった。
無理もない。
親友だと思っていた人々の子どもたちが自分の子どもを裏切り、あまつさえその両親は自分たちの子どもに肩入れしようとしているのだ。
「すみません、お父様」
私は謝罪した。
「いや、お前は何も気にしなくて良い。悪いのはお前ではないからな。それより、訴訟を起こされたとなると、お前も法廷に立たないといけなくなる。それは大丈夫か?」
「ええ。大丈夫です」
私は手紙をパラパラとめくり、はたと気づいた。
「これって、もしかして国王裁判ですか?」
「ああ……。どうやら、私たちのいざこざに、国王陛下まで巻き込もうとしているようだ」
国王裁判とは、文字通り貴族たちの揉め事を国王自らが裁く審判のことだ。
「こんな男女の揉め事に、国王陛下を?」
「ああ。あいつら、よっぽど自分たちの子どもが可愛いんだろうな」
お父様は嘆息した。
「それで、だ。グレース、他に証拠などはあるか?」
「証拠ですか?」
「ああ。もちろんあの音声だけでも、かなりの力がある。しかし、念には念を入れよう。私たちが勝つために、もっと証拠を集めなければならない」
「そうですねぇ」
私は考え込んだ。
「日記も、証拠にはなるんですよね?」
「ああ」
「私、ずっとつけてた日記があります。あとは、何人かジェシーの被害にあっていたり、彼らが2人きりでいる様子を目撃した生徒たちもいるはずです」
「なるほど。では、彼らに証人として出てもらえるかどうか、頼んできてくれないか?」
「承知しました」
私は頭を下げ、部屋から出て行こうとする。
「ちょっと待て」
お父様は、背中越しに声をかけてきた。
「はい」
お父様は咳払いして言った。
「……最近、仲の良い男友達がいると、オズワルドから聞いたぞ」
「ああ。ライナーのことですか?」
「今回の件について、大変世話になっているようだな。彼に、私がよろしくと言っていたと伝えてくれ」
「あっ、はい」
さっきの頼もしさはどこへやら。
お父様は、至極気まずそうにしていた。
15
お気に入りに追加
5,347
あなたにおすすめの小説
自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした
影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。
若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。
そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。
……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる