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ライナー

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「は?」


 突然現れたライナーに、驚く2人。

「だ、誰だ……?」


 イヴァンは私に向かって尋ねた。

「誰とは失礼だな。僕も君と同じ公爵子息だよ。君たちよりは1つ年上だけどね」

 ねー、とライナーは同意を求めて周囲の生徒たちに視線を向ける。


 女子生徒たちは色めきたった。


 初めて見たけど、本当にこの人、人気なんだ。


 私は感心する。

「それじゃ、グレース。帰ろうか」


 ライナーは私に手を差し出した。

「え、ええ」


 私はその手を取る。

「おい!」


 私たちがそのまま行こうとすると、イヴァンは私の肩を力強く掴んだ。

「痛っ」

「君さ、力の加減考えたら?」


 ライナーはイヴァンの手を私の肩から外した。

「グレース、痛がってるよ」

「グレースは俺の婚約者だ」

「は?」


 私は目を見開く。

「婚約破棄したじゃない」

「俺は認めてない。だからまだ君は俺の婚約者だ。だから、グレースは俺の許可なしに、他の男と一緒に帰るな」


 一体どういう理論なんだ。


 私は怖くなって、ライナーの方に視線をやる。

 彼は私の身体を腕で抱き寄せた。


「その理論は通じないね。だって、そもそも婚約は親が決めたことだし。だから君が婚約破棄を受け入れるかどうかじゃなく、君の親が受け入れた時点で、それはもう成立しているんだ。わかるかい?」

「そういうことよ。じゃあね、イヴァン、ジェシー。お幸せに。あなたたちの幸せを祈っているわ」


 私は一刻も早く彼らから離れたかった。

 が、まだ向こうは話し足りないようだ。


「なんであなたたち、仲良いの……?」


 ジェシーが私に向かって尋ねる。

「その感じだと、あなたがイヴァンに婚約破棄を申し出る前から知り合いみたいね。あなたも、人のこと言えないんじゃないの?」

「あなたたちと一緒にしないでくれるかしら」

 私は反論した。


「僕はグレースの家の執事と個人的に仲が良くてね。彼に、グレースの面倒を見てくれるように頼まれたんだ。僕たちは極めて健全な関係だよ。残念ながらね」


 最後に余計な一言を付け加えたのが少しイラッとしたが、彼を軽く小突くだけで我慢した。


「普段からその辺でイチャついてグレースに迷惑かけてた君たちとは違うんだよーーさあ、グレース。帰ろう」


 ライナーは私の肩を抱いたまま歩き出した。


「なっ……!」

「グレース!」

 背中越しに向かって、ジェシーは叫んだ。


「このクソビッチ!」


 私は後ろを振り返って、怒鳴りつける。

「それはこっちのセリフよ! あんただけには言われたくないわ!」
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