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相談
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「はぁ……」
「どうしたのですか? グレースお嬢様。随分とお疲れのようですが」
家に帰るなりため息をついた私を見て、執事のオズワルドが話しかけてきた。
「何か、お悩みでも? もしよろしければ、私が聞き役になりましょうか?」
オズワルドは、長年我が家に勤めてくれている老年の執事だ。
若いころはかなりモテていたのだろうと推測できるくらい、端正な顔立ちをしている。
「聞いてくれる?」
「ええ。もちろんでございますとも」
オズワルドは筆頭執事でいつも大変忙しそうに見えたが、こういうふうに細かな気遣いをしてくれる非常に優秀な人材だった。
私はその提案をありがたく受けさせてもらう。
「それがね、私の婚約者のイヴァンのことなんだけど」
「はあ、イヴァン様ですね。存じております」
オズワルドは優雅な仕草で、私に紅茶を入れてくれる。
「イヴァンとね、ジェシーの仲が異常なのよ」
「なるほど……。差し支えなければ、お聞きしても?」
「ええ――例えば二人きりになって遊びに行ったりとか、私そっちのけで楽しく話したりとか、挙句の果てにはジェシーがめちゃくちゃマウントを取って来るの」
「マウント?」
「ええ。自分こそがイヴァンと一番仲が良いと、暗にアピールしてくるの。しかもそれが友人というよりかは、むしろ恋人と言っても過言ではないような」
「それはそれは……。非常に災難でしたね」
と、オズワルドは穏やかに言った。
「それで、イヴァン様はそのことに関してどうおっしゃっているのですか?」
私はもう一度ため息をつく。
「どうもこうもないわよ。何も言わないの。否定もしないのよ」
私の投げやりな言い回しに、オズワルドはバッサリと返した。
「それは駄目ですね。失礼ですが、イヴァン様は随分とグレースお嬢様の婚約者としての自覚が足りないようで」
「でしょ? 私はどうすればいいかしら?」
「正直にお答えしていただければと思うのですが、グレースお嬢様はイヴァン様と別れるという選択肢はないのでしょうか?」
「うーん」
私はしばし熟考する。
「考えたこともなかったわ。イヴァンは何だかんだ言っても幼馴染だし、長い間婚約者としてやってきたから、それ相応の情はあるのよ」
「なるほど。グレースお嬢様は本当にお優しいですね」
オズワルドはそう言って、おやつを取ってくるために厨房に入り、ややあって戻って来て言った。
「私からの提案なのですが」
「何?」
「あなたも、他の男性と遊びに行くのはどうでしょうか?」
「へ?」
突拍子もない提案に、私は驚く。
「イヴァン様が婚約者としての義務を果たしていないのなら、あなた様も果たす必要はないでしょう。どうです、一度気分転換をしてみるというのは」
「どうしたのですか? グレースお嬢様。随分とお疲れのようですが」
家に帰るなりため息をついた私を見て、執事のオズワルドが話しかけてきた。
「何か、お悩みでも? もしよろしければ、私が聞き役になりましょうか?」
オズワルドは、長年我が家に勤めてくれている老年の執事だ。
若いころはかなりモテていたのだろうと推測できるくらい、端正な顔立ちをしている。
「聞いてくれる?」
「ええ。もちろんでございますとも」
オズワルドは筆頭執事でいつも大変忙しそうに見えたが、こういうふうに細かな気遣いをしてくれる非常に優秀な人材だった。
私はその提案をありがたく受けさせてもらう。
「それがね、私の婚約者のイヴァンのことなんだけど」
「はあ、イヴァン様ですね。存じております」
オズワルドは優雅な仕草で、私に紅茶を入れてくれる。
「イヴァンとね、ジェシーの仲が異常なのよ」
「なるほど……。差し支えなければ、お聞きしても?」
「ええ――例えば二人きりになって遊びに行ったりとか、私そっちのけで楽しく話したりとか、挙句の果てにはジェシーがめちゃくちゃマウントを取って来るの」
「マウント?」
「ええ。自分こそがイヴァンと一番仲が良いと、暗にアピールしてくるの。しかもそれが友人というよりかは、むしろ恋人と言っても過言ではないような」
「それはそれは……。非常に災難でしたね」
と、オズワルドは穏やかに言った。
「それで、イヴァン様はそのことに関してどうおっしゃっているのですか?」
私はもう一度ため息をつく。
「どうもこうもないわよ。何も言わないの。否定もしないのよ」
私の投げやりな言い回しに、オズワルドはバッサリと返した。
「それは駄目ですね。失礼ですが、イヴァン様は随分とグレースお嬢様の婚約者としての自覚が足りないようで」
「でしょ? 私はどうすればいいかしら?」
「正直にお答えしていただければと思うのですが、グレースお嬢様はイヴァン様と別れるという選択肢はないのでしょうか?」
「うーん」
私はしばし熟考する。
「考えたこともなかったわ。イヴァンは何だかんだ言っても幼馴染だし、長い間婚約者としてやってきたから、それ相応の情はあるのよ」
「なるほど。グレースお嬢様は本当にお優しいですね」
オズワルドはそう言って、おやつを取ってくるために厨房に入り、ややあって戻って来て言った。
「私からの提案なのですが」
「何?」
「あなたも、他の男性と遊びに行くのはどうでしょうか?」
「へ?」
突拍子もない提案に、私は驚く。
「イヴァン様が婚約者としての義務を果たしていないのなら、あなた様も果たす必要はないでしょう。どうです、一度気分転換をしてみるというのは」
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