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プロローグ

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 3人はいつも一緒だった。


 公爵令嬢である私、グレース。

 私の婚約者である、イヴァン。

 そして、同じく公爵令嬢のジェシー。


 私たちはいつも一緒だった。

 子どもの頃から、現在にいたるまで。

 そう、ずっと一緒だった。


 授業、登下校、放課後、休日……。

 私とイヴァンの傍には、いつもジェシーがいたのだ。


 そう、いつも。


「ねえ、グレース。聞いてる?」

「ん? あ、ああ。うん」

 今も、私たち三人は放課後、カフェに集っていた。

 正直私は今すぐ家に帰りたいが、それをジェシーが許さないのだ。

「聞いてよ。イヴァンがさ、私のことデブだって言うのよ、酷くない?」

「ハハハ……」

 私は苦笑することしか出来なかった。


 いつもそうだ。

 ジェシーが企画するこの放課後の遊びは、ただダラダラとどこかで話をするだけだった。


 主にジェシーが。


「だってそうだろ。そんなカロリー高いもんばっか飲んでたらな」

 心底楽しそうにイヴァンは笑う。

「ほら、それ。……名前なんだっけ?」

「フラペチーノだよ。もう、イヴァンったら本当に馬鹿なんだから」

「なんだと!」

「……」

 私は作り笑いをしながら、二人がじゃれているのをじっと見つめていた。


 今、何時だったかな。

 どうやって先に帰ろうか。


「あー、美味しい」

 目を細め、大袈裟な笑みを浮かべるジェシー。コップに口をつけ、離した途端、べっとりと口の周りに泡がついていた。

「ちょっと、お前なあ」

 イヴァンはニヤニヤしながら、備え付けの紙ナプキンを渡す。

「ほら、これで拭きな」

「えー、拭いてよお」

「たっく、しょうがねえなあ」

 イヴァンは満更でもなさそうな顔をして、ジェシーの口を優しく拭いた。


 私は立ち上がる。

「あれ? どうしたの? もう帰るの?」

 と、ジェシー。

「あっ、うん」

「えー、なんで? ……あ、もしかして私とイヴァンが仲良いから、嫉妬してる?」

「……」


 は?


「もう、グレースったら嫉妬深いんだから。何度も言ってるけど、私たち、ただの幼馴染だってぇ」

「そうだよ、グレース。今までだってそうだったろ?」


 私は心の中で叫ぶ。


 ええ、そうでしたね。

 いつもいつも、お2人はずっと一緒でしたもんね。


「いいえ、そういうわけじゃないんだけど。お父様が今日は早く帰ってこいって」

「えー、残念。グレースのお父様って本当に過保護よねえ」

「それなーーそうそう、グレース。君の父によろしく言っておいてくれ」

 もはや、婚約者のいる男が他の女と2人っきりになることについて、咎める気はさらさらなかった。

「ええ、言っておくわ。じゃあ、さよなら」

「うん、ばいばーい」

 ジェシーは天真爛漫に両手を大きく振った。


 私はお金をテーブルに置き、すぐさまカフェの出口に向かった。


 ーー2人から逃れるために。


 店を出る前にチラリと彼らの方を見ると、私がいなくなったのを良いことに、かなりの至近距離でくすくすと楽しそうにお喋りをしていた。
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