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男爵家

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「だから、私は男爵家などではない!」


 リチャード殿下は、私に掴みかからんばかりに怒鳴りつける。


 それを庇うようにダレルが立ち塞がった。


 やっぱりこの人はなんて良い人なんだろうか。

 結婚相手として、今後の人生を共に過ごすパートナーと捨ては申し分ない。


「その男は一体なんなんだ!?」


 殿下はダレルを指差す。

「まあ、無礼ですよ」


 私は口元を押さえた。

「彼は伯爵子息のダレル様です」

「王子である私に歯向かうのか!」

「王子って……。もう男爵家の人間であるあなたが何を言っているんですか?」


 私は呆れ返ってため息をついた。

「男爵家という、貴族とは言え身分の低いあなた方が、よく公爵家と伯爵家の人間に歯向かえましてね」

「だから私は――」

「だから、ではありませんよ。リチャード様。あなた自らが国王陛下に、アリス様と一緒に生きていくとおっしゃっていたではありませんが。お2人は非常にお似合いですわ。どうかお幸せに」

「……クソッ」


 何か言い返したいらしいが、実際問題その通りなので何も言えずに地団太を踏んでいる。


「そのことですが」

 リチャード殿下の後ろに控えていたアリスが言う。

「勘違いだったのです」

「「はあ?」」


 私とダレルは顔を見合わせた。


「勘違いだったとして、なんです? わざわざ我が家に宣言しにいらっしゃったのですか? ご苦労なことです」

 私は嫌味を言った。

「酷い……! なんでそんな冷たいんですか!」

 アリスは泣き真似をし始める。


 鬱陶しいから辞めてほしい。


「酷いと思いませんか? ダレル様」


 なんとこの女は、ダレルにまで媚を売るつもりでいるらしい。

 甘ったるい声で話しかけられたダレルは、困惑した表情で言った。

「いや、あなた方の方が酷いですけど」

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