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突撃

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 ――しかし。


 わざわざ王家経由で連絡してもらった意味を、あの人たちは全く理解していなかった。


 男爵令嬢アリスとその婚約者であるリチャード王子が、突然我が屋敷に突撃してきたのだ。


 当然脈絡も何もない。

 事前に約束したわけでもない。


 その日はたまたまダレルとのお見合い第2弾の日で、前回と同じように公爵家の屋敷に招いて、2人で色んな話をする予定があった。


「お久しぶりですね、ダレル様」

「お、お久しぶりです! シエラ様」


 再会したダレルは、相変わらず可愛らしかった。

 挨拶をしただけなのに、声がひっくり返っている。


「あっ、えっと」

 それに気づいて、恥ずかしくなって顔を赤らめている。


 私はくすくす笑いながら、

「本日はお越しいただき、ありがとうございます」

 と、言った。

「いえいえ、こちらこそありがとうございます。まさかまた、会っていただけるとは」

「お嫌でした?」

「いえいえいえ! 全然、むしろ嬉し……あっ、いや、なんでもありません」

「うふふ」


 なんかもう、癒しだ。

 あのアホの手紙を読んだせいか、すべての男性が素晴らしく見える。


「それでは、客室にご案内いたしますね」

「あっ、はい。ありがとうござ――」


「お嬢様!」

「ひぃっ」


 突然、使用人に呼びかけられる。

 ダレルはびっくりして悲鳴をあげていた。


「何よ」

 私は邪魔をされて、少々ムッとする。

「今日は私、お見合いがあるからって――」


「そ、それが」

 メイドは玄関を指差した。

「あ、あの人たちが! あの方たちが、お嬢様に用があると!」

「はい?」


「シエラ!」


 次の瞬間、聞き覚えのある不快な声が耳に届いた。


「お前、私という者がいながら、別の男と会っているのか!?」


 ……ああ。

 最悪。


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