22 / 24
突撃
しおりを挟む
――しかし。
わざわざ王家経由で連絡してもらった意味を、あの人たちは全く理解していなかった。
男爵令嬢アリスとその婚約者であるリチャード王子が、突然我が屋敷に突撃してきたのだ。
当然脈絡も何もない。
事前に約束したわけでもない。
その日はたまたまダレルとのお見合い第2弾の日で、前回と同じように公爵家の屋敷に招いて、2人で色んな話をする予定があった。
「お久しぶりですね、ダレル様」
「お、お久しぶりです! シエラ様」
再会したダレルは、相変わらず可愛らしかった。
挨拶をしただけなのに、声がひっくり返っている。
「あっ、えっと」
それに気づいて、恥ずかしくなって顔を赤らめている。
私はくすくす笑いながら、
「本日はお越しいただき、ありがとうございます」
と、言った。
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。まさかまた、会っていただけるとは」
「お嫌でした?」
「いえいえいえ! 全然、むしろ嬉し……あっ、いや、なんでもありません」
「うふふ」
なんかもう、癒しだ。
あのアホの手紙を読んだせいか、すべての男性が素晴らしく見える。
「それでは、客室にご案内いたしますね」
「あっ、はい。ありがとうござ――」
「お嬢様!」
「ひぃっ」
突然、使用人に呼びかけられる。
ダレルはびっくりして悲鳴をあげていた。
「何よ」
私は邪魔をされて、少々ムッとする。
「今日は私、お見合いがあるからって――」
「そ、それが」
メイドは玄関を指差した。
「あ、あの人たちが! あの方たちが、お嬢様に用があると!」
「はい?」
「シエラ!」
次の瞬間、聞き覚えのある不快な声が耳に届いた。
「お前、私という者がいながら、別の男と会っているのか!?」
……ああ。
最悪。
わざわざ王家経由で連絡してもらった意味を、あの人たちは全く理解していなかった。
男爵令嬢アリスとその婚約者であるリチャード王子が、突然我が屋敷に突撃してきたのだ。
当然脈絡も何もない。
事前に約束したわけでもない。
その日はたまたまダレルとのお見合い第2弾の日で、前回と同じように公爵家の屋敷に招いて、2人で色んな話をする予定があった。
「お久しぶりですね、ダレル様」
「お、お久しぶりです! シエラ様」
再会したダレルは、相変わらず可愛らしかった。
挨拶をしただけなのに、声がひっくり返っている。
「あっ、えっと」
それに気づいて、恥ずかしくなって顔を赤らめている。
私はくすくす笑いながら、
「本日はお越しいただき、ありがとうございます」
と、言った。
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。まさかまた、会っていただけるとは」
「お嫌でした?」
「いえいえいえ! 全然、むしろ嬉し……あっ、いや、なんでもありません」
「うふふ」
なんかもう、癒しだ。
あのアホの手紙を読んだせいか、すべての男性が素晴らしく見える。
「それでは、客室にご案内いたしますね」
「あっ、はい。ありがとうござ――」
「お嬢様!」
「ひぃっ」
突然、使用人に呼びかけられる。
ダレルはびっくりして悲鳴をあげていた。
「何よ」
私は邪魔をされて、少々ムッとする。
「今日は私、お見合いがあるからって――」
「そ、それが」
メイドは玄関を指差した。
「あ、あの人たちが! あの方たちが、お嬢様に用があると!」
「はい?」
「シエラ!」
次の瞬間、聞き覚えのある不快な声が耳に届いた。
「お前、私という者がいながら、別の男と会っているのか!?」
……ああ。
最悪。
0
お気に入りに追加
1,177
あなたにおすすめの小説
【完結】ああ……婚約破棄なんて計画するんじゃなかった
岡崎 剛柔
恋愛
【あらすじ】
「シンシア・バートン。今日この場を借りてお前に告げる。お前との婚約は破棄だ。もちろん異論は認めない。お前はそれほどの重罪を犯したのだから」
シンシア・バートンは、父親が勝手に決めた伯爵令息のアール・ホリックに公衆の面前で婚約破棄される。
そしてシンシアが平然としていると、そこにシンシアの実妹であるソフィアが現れた。
アールはシンシアと婚約破棄した理由として、シンシアが婚約していながら別の男と逢瀬をしていたのが理由だと大広間に集まっていた貴族たちに説明した。
それだけではない。
アールはシンシアが不貞を働いていたことを証明する証人を呼んだり、そんなシンシアに嫌気が差してソフィアと新たに婚約することを宣言するなど好き勝手なことを始めた。
だが、一方の婚約破棄をされたシンシアは動じなかった。
そう、シンシアは驚きも悲しみもせずにまったく平然としていた。
なぜなら、この婚約破棄の騒動の裏には……。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
もう一度7歳からやりなおし!王太子妃にはなりません
片桐葵
恋愛
いわゆる悪役令嬢・セシルは19歳で死亡した。
皇太子のユリウス殿下の婚約者で高慢で尊大に振る舞い、義理の妹アリシアとユリウスの恋愛に嫉妬し最終的に殺害しようとした罪で断罪され、修道院送りとなった末の死亡だった。しかし死んだ後に女神が現れ7歳からやり直せるようにしてくれた。
もう一度7歳から人生をやり直せる事になったセシル。
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
この国に私はいらないようなので、隣国の王子のところへ嫁ぎます
コトミ
恋愛
舞踏会で、リリアは婚約者のカールから婚約破棄を言い渡された。細身で武術に優れた彼女は伯爵家の令嬢ながら、第三騎士団の隊長。この国の最重要戦力でもあったのだが、リリアは誰からも愛されていなかった。両親はリリアではなく、女の子らしい妹であるオリヴィアの事を愛していた。もちろん婚約者であったカールも自分よりも権力を握るリリアより、オリヴィアの方が好きだった。
貴族からの嫉妬、妬み、国民からの支持。そんな暗闇の中でリリアの目の前に一人の王子が手を差し伸べる。
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた婚約者。
完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
第一皇子とその方が相思相愛ならいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
カクヨム、なろうにも投稿しています。
金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。
銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」
私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。
「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」
とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。
なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。
え?どのくらいあるかって?
──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。
とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。
しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。
将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。
どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。
私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?
あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。
◆◆◆◆◆◆◆◆
需要が有れば続きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる