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条件

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 よし、逃げよう。


 私は強く決意した。


 逃げよう。

 この機に乗じて、第三王子の婚約者という立場から。

 リチャード殿下の教育係から、逃げよう。


 これは無理だ。


 あの男はもう、本当にどうしようもない。

 あの馬鹿は治らない。


 パーティ終了後、屋敷に戻った私は早速、両親とともに嘆願書を提出した。


 パーティの最中では、想像だにしない未曽有の事態に対応出来ず、お父様とお母様はただ茫然と事の顛末を見守っていたのだが。


 時間が経ってようやく、ふつふつと怒りが湧いてきたらしい。


「なんなんだ、あの王子は!」

「シエラを、公爵家の人間をなんだと思っているのよ!」

 と、地団太を踏んでいた。


「落ち着いて、お父様たち」


 逆に、先に怒り狂っていたおかげで、幾分か冷静さを取り戻していた私は、両親を宥める側に回った。


「とりあえず、陛下にお手紙を書きましょうよ。正直、もうレベルの問題じゃ、婚約なんて続行出来ないから、陛下も婚約破棄させてくれるでしょうし」


 リチャード殿下と男爵令嬢アリスの醜態が、公然の場で、しかも自分の誕生パーティの最中に、晒されることになったのだ。


 今までは、私を「教育係」として、なんとか奴の改善に図っていた陛下も、第三王子を処罰する義務を負うことになる。


 陛下にとって幸いだったのは、リチャード殿下が第三王子だったことだ。


 第一王子は既に王太子として「次期国王」の座についているし、第二王子はそのサポートをするため、他国へ留学に行っている。


 あの男がいなくなろうがどうなろうが、王家にとっては痛手でもなんでもない。

 むしろ、政治に口を出す立場にいない方がありがたいだろう。


 私と両親は、リチャード王子との婚約破棄を正式に願い出る手紙を書いた。


 ついでに、こちら側が被った甚大な被害に対する慰謝料や、その他もろもろの条件も追記する。


 1つ目は、慰謝料をリチャード王子と男爵令嬢アリスに支払ってもらうこと。

 2人には、王家や男爵家からではなく、自分の持っている資産から出してもらう。


 2つ目は、今後一切我が公爵家は2人と関わらないということ。


 3つ目は、何があろうとも、2人を結婚させること。


 1つ目と2つ目は、被害者として当たり前の権利。

 そして3つ目は、こちら側からの嫌がらせである。


 確実にうまく行かないだろう2人をくっつけさせ、破滅するのを見届けるところまでいかないと、私たちの怒りはどうにもならないだろう。

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