婚約破棄? したければ別に良いんですけど、今まで肩代わりした分は全額返してくださいね

 テイラー男爵家は、成金である。


 もともとは一般庶民の出だったが、祖父が仕事に成功し巨万の富を築いたことで、王家から特別に「男爵」という身分を与えられたのだ。


 そんな彼らはお金が大好き。

 金を稼ぎ、それを貯めることこそが至高だと考えている。


 それに目をつけた万年金欠の王家が、第二王子との婚約話を持ってきた。


「それ、お金になるの?」

「うーん……。まあ、王家に借りを作っておけば、色んな事業が展開出来るだろうし」

「確かに王家の名前があれば、客もすぐつきそうね」


 なんて第二王子と婚約させられたのが、テイラー家長女ロジーだった。


 しかしその第二王子はロジーを毛嫌いし、他の女性と浮気三昧。

 さらには男爵家に金をせびり、それを湯水のように使って豪遊する。


 そんなある日、ロジーは第二王子に、

「お前のような薄汚い庶民よりも、もっと俺に相応しい相手を見つけた。婚約破棄を命じる」

 と、言われてしまう。


「はあ……。婚約破棄ですか」

「なんだ? 文句でもあるか? 俺は第二王子――」

「まあ、したければ別に良いんですけど、今まで肩代わりした分は全額返済してくださいね。帳簿に全部つけてるんで」

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