巫女殺害未遂という言われなき罪で殺されそうになりましたが、私が実は本物の巫女なんですよね

小倉みち

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怒り ~第三王子視点~

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 巫女が毒殺されかけた。

 しかもそれが、公爵令嬢リディアのせいらしい。


 その話を聞いたあの日、俺は今までに感じたことがないくらいの怒りを覚えた。


 巫女は、俺たちにとっては神そのものだ。


 神という超越した存在。


 正直言って、俺にはそこまで信仰心があるわけじゃない。

 神なんて非科学的なものよりも、どちらかと言えば、魔法工学なんかの方が信用に値する。


 宗教は感性で、科学は理性。


 今の時代、神よりも科学を信じたほうが建設的なのではないのかとさえ思っていた。


 ーーしかし。


 初めて「巫女」を見た瞬間、俺は人生最大の衝撃を受けた。


 彼女こそが、「巫女」なのだと。


 今まで散々、非科学的なことを見下していた己が恥ずかしい。


 そう思うほど、彼女はまさしく神に近しい存在だったのだ。


 まず、オーラが違う。

 まるで陽の光を一身に浴びたような、眩しい姿。

 身も心も巫女として神に尽くし、「純真」という言葉そのものという雰囲気。


 かと言って、近寄り難いような性格ではなく。


 天真爛漫で、愛嬌がある。

 俺を見上げるときの上目遣いや、その細い腕で俺に抱きついてくるときに身体から漂ってくる香り、少し世間知らずなところ。


 全てがもう、可愛かった。


 そんな彼女が、殺されかけた。


 その犯人は、公爵令嬢リディアという女。

 かつては、俺の婚約者候補にまで名が挙がった人物のはずだが、いつの間にかその話はなかったことになっていた。


 見目はまあまあだが、巫女に比べれば雑草のようなもの。

 公爵令嬢だというのに、地味で目立たない存在だ。


 きっと彼女は、自分よりも目立つ巫女に嫉妬して、それでーー。


 許せない。

 許せるものか。


 絶対にあの女をとっ捕まえて、目にものを見せてやる。
 
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