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メイド ~父親視点~
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私はどうにかして聖女から詳細を聞こうと努力したが、彼女は泣いているだけで何も言わない。
私は正直、だんだんとイライラしてきた。
自分の娘の友人であり、かつ「聖女」というこの世界でもトップクラスの職に就く特別な人間である彼女に対して、私は初めて怒鳴った。
「いい加減にしろ!」
「ひっ」
すぐさま後悔する。
私の怒鳴り声に驚いた彼女は悲鳴をあげ、さらに泣き出したからだ。
私の苛立ちはまったく収まらない。
それどころか、彼女の泣き声の大きさとともにどんどん肥大化していく。
「……クソッ」
私は思い切り椅子を蹴る。
特注で作った本革の椅子が、ボゴンと音を立てて床にすっ転がった。
なぜだ。
一体どうして、我が娘は家出を?
……いや、落ち着け。
娘のことだ。
どうせ生活がままならくなったり、私たち家族のことが心配になったりして戻ってくるだろう。
もって数日か。
彼女のことは、そこまで心配しなくても良さそうだ。
問題は、なぜフレイヤが家出をしたのか。
あの良い子が、一体どうしてそこまで思いつめた行動を取ったのかということだ。
ふと、思い出す。
私は部屋にメイドを呼んだ。
「はい。失礼いたします」
彼女は確か、フレイヤとそれなりに仲が良かったはずだ。
メイドは無表情なまま部屋に入室する。
泣き叫ぶイルゼに一瞬視線を向けたあと、こちらに視線を戻す彼女。
「今日の娘の予定は?」
「……はあ」
一体どういう心境なのですか、と言うメイド。
「だから」
私はイライラしていた。
「早く言え。娘は今日、何をしてたんだ? 言わなきゃクビにするぞ」
「……フレイヤ様は、本日婚約者様とお会いしたはずですが」
メイドの言葉を聞き、さらに叫ぶイルゼ。
私は舌打ちをした。
「ふん。それを早く言え」
「……恐れながら申し上げます」
用は済んだはずだが、メイドは部屋から出て行かなかった。
「なんだ?」
「どういう風の吹き回しか知りませんが、もう遅いですよ」
「……なんだと?」
「お嬢様はもう、戻ってこないでしょう。あなたがいくら父親面をしたとしても。彼女はもう、誰も許しはない」
「は?」
「それでは、失礼します」
「おい! お前、主人に何を言う!? 第一私はあの子の父親だ! お前をクビに――」
「クビでもなんでもどうぞ。お嬢様がおられない今、私がここで働く理由はありませんから」
メイドは最後綺麗な礼をして、部屋を立ち去った。
私は正直、だんだんとイライラしてきた。
自分の娘の友人であり、かつ「聖女」というこの世界でもトップクラスの職に就く特別な人間である彼女に対して、私は初めて怒鳴った。
「いい加減にしろ!」
「ひっ」
すぐさま後悔する。
私の怒鳴り声に驚いた彼女は悲鳴をあげ、さらに泣き出したからだ。
私の苛立ちはまったく収まらない。
それどころか、彼女の泣き声の大きさとともにどんどん肥大化していく。
「……クソッ」
私は思い切り椅子を蹴る。
特注で作った本革の椅子が、ボゴンと音を立てて床にすっ転がった。
なぜだ。
一体どうして、我が娘は家出を?
……いや、落ち着け。
娘のことだ。
どうせ生活がままならくなったり、私たち家族のことが心配になったりして戻ってくるだろう。
もって数日か。
彼女のことは、そこまで心配しなくても良さそうだ。
問題は、なぜフレイヤが家出をしたのか。
あの良い子が、一体どうしてそこまで思いつめた行動を取ったのかということだ。
ふと、思い出す。
私は部屋にメイドを呼んだ。
「はい。失礼いたします」
彼女は確か、フレイヤとそれなりに仲が良かったはずだ。
メイドは無表情なまま部屋に入室する。
泣き叫ぶイルゼに一瞬視線を向けたあと、こちらに視線を戻す彼女。
「今日の娘の予定は?」
「……はあ」
一体どういう心境なのですか、と言うメイド。
「だから」
私はイライラしていた。
「早く言え。娘は今日、何をしてたんだ? 言わなきゃクビにするぞ」
「……フレイヤ様は、本日婚約者様とお会いしたはずですが」
メイドの言葉を聞き、さらに叫ぶイルゼ。
私は舌打ちをした。
「ふん。それを早く言え」
「……恐れながら申し上げます」
用は済んだはずだが、メイドは部屋から出て行かなかった。
「なんだ?」
「どういう風の吹き回しか知りませんが、もう遅いですよ」
「……なんだと?」
「お嬢様はもう、戻ってこないでしょう。あなたがいくら父親面をしたとしても。彼女はもう、誰も許しはない」
「は?」
「それでは、失礼します」
「おい! お前、主人に何を言う!? 第一私はあの子の父親だ! お前をクビに――」
「クビでもなんでもどうぞ。お嬢様がおられない今、私がここで働く理由はありませんから」
メイドは最後綺麗な礼をして、部屋を立ち去った。
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