死にたいのなら、1人でどうぞ

 公爵令嬢フレイヤは、心底困っていた。


 その理由は、幼馴染で聖女であるイルゼの存在。


 彼女は昔から、かなりメンタル的に厄介だった。


 幼いころに聖女に選ばれ、ひたすら勉学を積むも叱られたり怒鳴られたりと、イルゼはかなり疲弊していた。

 フレイヤはフレイヤで当然忙しかったけれど、真っ青な顔で毎日、

「死にたい」

 と連呼する友人をただ見ているわけにもいかず、

「大丈夫?」

「死にたいなんて言わないで」

「辛いなら、私がなんとかしてあげる」

 と、彼女を励まし続けた。


 それが駄目だったのだろうか、彼女が聖女に選ばれて10年経った今、イルゼは完全にフレイヤに依存してしまっていた。


 毎日毎日、

「死にたい」

「あなたがいなきゃ嫌」

 と、言われ続ける。


 それはまだしも、厄介なのは、フレイヤと友人たちの間をことごとく邪魔していくこと。

 聖女という立場を利用して、友人たちにあることないこと吹き込み、フレイヤを孤立させる。

 イルゼがすべての友人たちを奪うせいで、フレイヤはまともな人間関係を築いたことがない。


 だが、それを止める術はなかった。

 何度も辞めてと、辞めないと友達を辞めると言ってきた。


 しかし、

「そんなの嫌!」

 と、彼女は荒れ狂い、

「死んでやる!」

 とか、

「聖女なんて辞めてやる!」

 と、怒鳴る。


 それを知った周りの大人たちは、慌てて私に謝罪させようとする。


 ーーもう、ずっとこんな調子だった。


 イルゼに依存され、フレイヤの人生はめちゃくちゃだった。


 そんなある日、最悪の事態が起こる。


 なんと、フレイヤの婚約者をイルゼが寝とったのだ。


 相変わらず、

「だって、フレイヤが冷たいから」

 とか、

「あの子だって、冷たいあなたよりも私の方が好きみたい」

 とか、

「あなたがいなきゃ嫌。死んでやるわ」

 と言い出すイルゼ。


 しかし、もうフレイヤは我慢の限界だった。

 喚き続けるイルゼに向かい、彼女はこう言い放つ。

「もうあなたのお守りはまっぴらよ。死にたいなら、1人で死んでちょうだい」
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