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第2章

命令

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「どうしてくれんだ、お前」


 ゼロは思いきりパーシーを睨みつける。

「……」


 彼は視線を泳がせた。

「これ、だいたいどれくらいなの?」


 私は1枚の銅貨を見せながらゼロに尋ねる。

「あんた、本当に世間知らずだよな」

 ゼロは若干引きつつも説明してくれる。


「こんな金じゃ、1人1食分も食えやしねぇ。騙されたんだ、俺たちは」


 なるほど……。

 最低賃金以下だな。


「あんた、こいつに報酬のこと聞かなかったのか?」

「……ごめん。時間がなかったというか。本当にごめん」

「そこまで謝るなよ。俺も聞くの忘れてたから」


 だが、とゼロは腕の力を強める。

「痛い痛い痛い痛い!」

「こいつだけは許せねぇ。あんなはした金で俺たちに仕事をさせやがって」

「……聞いてこなかったあんたらが悪いじゃないですか」


 あの人の良さそうな態度はどこへやら、パーシーはゼロを睨みつける。

「俺はちゃんと報酬を払いました!」

「これが報酬か? なめんな、クソガキ!」


 ゼロの怒鳴り声を聞いて、パーシーは涙目になる。

「し、仕方がないじゃないですか! うちの村には金がないんです!」

「知るかボケ。……なあヴァイオレット、こいつどうする?」

「どうするって言ったって……」

「こいつの血全部飲んだところで、ただまずいだけだしな」

「うーん。あっ、そうだ」


 私はふと思い出し、鞄を漁る。

「なんだ?」

「追放されるときに、いろいろ実家からパクってきたんだけど」

「……あんた、意外と神経図太いよな」

「その中に、これがあるの」


 私は鞄の中から1つの魔法具を取り出す。


「テッテレー。首輪ー」

「ただの首輪じゃねぇか」

「ブッブー。そんなわけないじゃん。この首輪はねぇ」


 私はゼロに拘束されて動けなくなっているパーシーの首にそれをつける。


「な、なんですか!?」

「これをつけられた者は、つけた者の命令に従わざるを得なくなる魔法具よ」


 こんな危なそうなもの使い道ないだろうなと思ってたけど、あって良かった。


「は?」

「ゼロ、ちょっと離してみて」

「あ、ああ」


 ゼロはパーシーを離した。

 彼はその瞬間を狙って、ダッシュで私たちから逃げていく。


「ストップ!」


 私が声をかけると、首輪が淡く光る。

 走り出したパーシーの足が止まり、彼は急停止して前に倒れ込んだ。


「クソッ。なんだよこれ!」

 彼は寝そべったまま無理やり首輪を外そうとするが、取れない。


「それ、つけた人間が外さなきゃ取れないの」


 私はパーシーにそう言って、ゼロに視線を向ける。

「どう? 割に合うくらいの報酬金を持ってくるまで命令すれば良いと思ったんだけど」

「あんた……。本当えげつねぇな。さすが元貴族だ」

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